まるで星空を覆う白いベール ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したタランチュラ星雲

こちらは「かじき座(旗魚座)」の方向約16万光年先にある輝線星雲「タランチュラ星雲(Tarantula nebula)」の一部。星空を覆う白い繊細なベールを思わせる美しい光景が視野いっぱいに広がっています。

ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の広視野カメラ3(WFC3)で観測された大マゼラン雲の「タランチュラ星雲(Tarantula Nebula)」(Credit: ESA/Hubble & NASA, C. Murray)
【▲ ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の広視野カメラ3(WFC3)で観測された大マゼラン雲の「タランチュラ星雲(Tarantula Nebula)」(Credit: ESA/Hubble & NASA, C. Murray)】

「かじき座30(30 Doradus)」の名でも知られるタランチュラ星雲は、天の川銀河の伴銀河(衛星銀河)のひとつ「大マゼラン雲」(Large Magellanic Cloud: LMC、大マゼラン銀河とも)にあります。

宇宙における塵の役割を理解するための観測

この画像は「ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope: HST)」の「広視野カメラ3(WFC3)」で取得した観測データを使って作成されました。画像を公開した欧州宇宙機関(ESA)によると、大マゼラン雲の質量は天の川銀河の10~20%ですが、新たな星を生み出す星形成領域が幾つも存在しています。タランチュラ星雲もそんな星形成領域のひとつで、中心部分では太陽の200倍以上もの質量を持つ大質量星が発見されています。

タランチュラ星雲には星の材料となるガスとともに、固体の微粒子である塵(ダスト)も多く集まっています。塵には可視光線、特に波長が短い青色光を吸収・散乱しやすい性質があるため、塵の多い環境にある星は実際よりも赤っぽい色で観測されます。そんな塵を含む星雲の観測を通じた塵の粒子の研究は、新しい恒星や惑星が形成される上で塵が果たす役割を理解する上で役立つということです。

冒頭の画像は“ハッブル宇宙望遠鏡の今週の画像”として、ESAから2025年2月10日付で公開されています。ちなみに、タランチュラ星雲の別の範囲を捉えた画像が2025年1月20日付でESAから公開されています。こちらも是非一緒にお楽しみ下さい!

 

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文/ソラノサキ 編集/sorae編集部