
こちらは「とけい座(時計座)」の一角を捉えた画像。中央下部に見えている渦巻銀河は「LEDA 488834」で、その上には数多くの銀河が集まった銀河団が写っています。ESA=ヨーロッパ宇宙機関(欧州宇宙機関)によると、この銀河団は天球上の位置をもとに「J041110.98-481939.3」と呼ばれていて、地球からは約60億光年離れています。

たった3回の観測で2600万個の銀河を検出
冒頭の画像は2023年7月に打ち上げられたESAの「Euclid(ユークリッド)宇宙望遠鏡」で取得した観測データを使って作成されたのですが、実は元の画像を70倍に拡大したものになります。
次に掲載するのが元の画像で、「Euclid Deep Field South(ユークリッド・ディープ・フィールド・サウス)」と呼ばれています。Euclid Deep Field Southは28.1平方度(満月の見かけの面積の約140倍)という広い面積をカバーしていますが、ESAによればEuclid宇宙望遠鏡はたった1回の観測でデータを取得し、1100万個以上の銀河を検出したといいます。

Euclid宇宙望遠鏡は「りゅう座(竜座)」と「ろ座(炉座)」でも同様の観測を行っており、データはそれぞれ「Euclid Deep Field North(ユークリッド・ディープ・フィールド・ノース)」および「Euclid Deep Field Fornax(ユークリッド・ディープ・フィールド・フォルナックス)」と呼ばれています。
Euclid Deep Field Northでは1000万個以上、Euclid Deep Field Fornaxでは450万個の銀河が検出されました。Euclid Deep Field Southも合わせれば、全部で2600万個の銀河がわずか3回の観測で検出されたことになります。


2025年3月19日にESAが公開した3つのEuclid Deep Fieldは合計63.1平方度(満月の見かけの面積の約315倍)におよびますが、6年間にわたるEuclid宇宙望遠鏡のミッションでは全天の3分の1、実に1万4000平方度(同・7万倍)の範囲を観測し、15億個以上の銀河が捉えられる予定です。今回の観測データ公開時点では目標の約14%に相当する約2000平方度の観測が行われたといいます。
ミッションの主な目的は、暗黒エネルギー(ダークエネルギー)や暗黒物質(ダークマター)の謎に迫るために、宇宙の正確な3Dマップを作成すること。研究者はEuclid宇宙望遠鏡の観測データをもとに、暗黒エネルギーおよび暗黒物質の性質と“宇宙の大規模構造”の形成における役割、宇宙の膨張は時間の経過とともにどのように変化してきたのか、といった謎の解明に挑むことになります。
38万個以上の銀河と500個の“強い”重力レンズ効果の候補をカタログ化


また、今回のEuclid Deep Field画像公開にあわせて、渦巻腕(渦状腕)や棒状構造などの形態で分類された38万個以上の銀河のカタログと、“強い”重力レンズ効果(※)を受けた銀河の候補500個のカタログも公開されました。これらは市民科学者の協力とAIのアルゴリズムによってEuclid宇宙望遠鏡の観測データを分析することで作成されたもので、特に“強い”重力レンズ効果の候補は最終的に既知の約100倍に相当する約10万個に達する見込みだということです。
※…銀河の像がリング状にゆがんだ「アインシュタインリング」を生み出すような重力レンズ効果のこと。重力レンズ効果の詳細については記事末尾に掲載した関連記事をご参照下さい。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
関連記事
- 19世紀から知られる銀河に隠れていたアインシュタインリング ESA宇宙望遠鏡が発見(2025年2月13日)
- 208ギガピクセルのパノラマ画像 ESAがユークリッド宇宙望遠鏡の観測データから作成(2024年10月18日)
参考文献・出典
- ESA - Euclid opens data treasure trove, offers glimpse of deep fields