明るさが変化する星は「変光星」と呼ばれていて、明るさが変わる仕組みによってさまざまな種類に分類されています。今回、星の表面の全体や一部が膨らんだり縮んだりすることで明るさが変わる「脈動変光星」の一種であるものの、その形が涙滴型(しずく型)にゆがんでいる変光星が見つかったとする研究成果が発表されました。

■伴星の潮汐力によって、星の片側が飛び出るように膨らんでいる

潮汐力で「しずく型」に変形した脈動変光星を描いたイメージ図(Credit: Gabriel Pérez (SMM-IAC))

しずく型をしていることが判明したのは、南天の「りゅうこつ座」と「とびうお座」のあいだ、およそ1600光年先にある「HD 74423」です。HD 74423は大きな主星と小さな伴星からなる連星で、伴星は約1.6日の周期で主星を周回しています。互いの距離が近いため、主星の表面は片側が伴星の重力がもたらす潮汐力によって引き伸ばされ、イメージ図のように全体ではしずく型をしていると考えられています。

8.6等とされるHD 74423は、およそ19時間周期で変光していることが2002年に報告されています。その様子は2018年から2019年にかけて南天の観測を行ったNASAの系外惑星探査衛星「TESS」の観測データにも残されているのですが、最も明るくなったときの明るさはおおむね一定であるのに対して、最も暗くなったときの明るさは、明るめと暗めを交互に繰り返すパターンを示していました。

Gerald Handler氏(ニコラウス・コペルニクス天文センター、ポーランド)らの研究チームがTESSの観測データを調べたところ、HD 74423は連星であり、暗くなったときの明るさが変化するのは主星と伴星の公転に関わりがあることが示されました。その後の分析により、脈動変光星である主星の表面は伴星の潮汐力によって片側だけが飛び出るように膨らんでいて、膨らんだ側のみが大きく脈動しているものと判断されました。

地球からHD 74423を観測すると、伴星は傾いて周回しているように見えます。主星の膨らみは伴星の公転に従うように移動するため、地球からは主星に向かって左右どちらかに膨らみが飛び出ているように見えることもあれば、主星と重なって見えたり裏側に隠れて見えなくなったりもします。この違いが、暗くなったときの明るさが明るめだったり暗めだったりする原因とみられています。

つまり、HD 74423では主星の脈動(約19時間周期)と膨らみをもたらす伴星の公転(約1.6日周期)の2つの周期が存在しており、TESSはこの両方の周期を見事に記録していたことになるわけです。

■長年探し求められてきた星の発見に研究者も喜ぶ

【上:膨らみが見えるか見えないかで明るさが変化する様子を示した動画】

このような「伴星の潮汐力が影響を及ぼす変光星」の存在は、1940年代にはすでに予想されていました。近年では宇宙望遠鏡「ケプラー」の観測データから、伴星が楕円軌道を描く連星において、主星と伴星が接近したときに潮汐力で楕円型に変形する際に明るさが変わる「ハートビート星」(明るさの変化が脈拍を示すグラフのように見えることから)が見つかっています。

しかし、潮汐力によって変形した星の片側だけが大きく脈動する変光星は、今回が初めての発見になるといいます。研究に参加したDon Kurtz氏(セントラル・ランカシャー大学、イギリス)は、「1980年代からその存在が信じられてきた星を、ついに見つけたのです!」と喜びを語っています。

なお、冒頭のイメージ図では伴星に面した側が膨らんでいるように描かれていますが、潮汐力による作用では伴星の反対側が膨らむ可能性もあります(地球でも月に面した側とその反対側が満潮になります)。今回の研究ではどちらに膨らんでいるのかまでは判明しなかったとされており、研究チームは今後の観測に期待を寄せています。

 

Image Credit: Gabriel Pérez (SMM-IAC)
Source: カナリア天体物理研究所
文/松村武宏

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