
こちらは、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が観測した矮小銀河「WLM(Wolf-Lundmark-Melotte:ウォルフ・ルントマルク・メロッテ)」のクローズアップ。くじら座の方向、地球から約300万光年先にあります。

「どこにその銀河が写っているの?」と思われるかもしれませんが、実はWLMは視野全体を占めており、散らばった無数の星々の多くがWLMを構成する星なのです。
また、ウェッブ宇宙望遠鏡の画像に特有の大小8本の光条(回折スパイク)を伴う天の川銀河の星や、WLMを透かして見えている背景の銀河も写っています。
天の川銀河の近くにありながらも“孤立した”銀河
WLMは、天の川銀河が属する「局所銀河群(局部銀河群)」を構成する銀河のひとつです。広大な宇宙のなかでは近くにあると言える銀河ですが、他の銀河からは比較的孤立した環境にあります。
ラトガース大学のKristen McQuinn助教によると、近隣にある銀河の多くは天の川銀河と重力を介した相互作用をしているため、単独での研究が困難な場合があります。一方で、WLMはこれまで他の銀河と相互作用をしてこなかったと考えられており、銀河の形成や進化の理論を検証するための良い観測対象となっています。
初期宇宙の特徴を残す銀河内のガス
WLMのもうひとつの大きな特徴は、銀河を満たすガスが初期宇宙の銀河を構成していたガスに似ている点です。化学的に言えば、重元素(水素やヘリウムよりも重い元素)が少ない状態にあります。
重元素は恒星内部の核融合反応や超新星爆発などの激しい現象を通じて、長い時間をかけて生み出されてきました。ところがWLMでは、銀河から外部へとガスが大規模に流出する「銀河風」という現象によって、重元素が銀河の外へ排出されてしまったと考えられています。大質量星の超新星爆発は強力な現象であり、WLMのような小さい銀河では物質を銀河間空間へ押し出してしまうほどのエネルギーがあるといいます。
こうした特徴を持つWLMを観測することで、初期の宇宙に存在していたような小さな銀河における星の形成と進化を詳しく研究することが可能になるのです。
【▲ 矮小銀河「WLM」の全体像からウェッブ宇宙望遠鏡の観測範囲へズームイン(動画)(Credit: NASA, ESA, CSA, STScI, and K. McQuinn (Rutgers University), A. Pagan (STScI).)】
まるで異星の夜空のように圧倒的な星々
ウェッブ宇宙望遠鏡は、様々な色・大きさ・温度・年齢・進化の段階にあるWLMの無数の星々を鮮明に捉えています。観測プログラムを提案したMcQuinnさんは、プラネタリウムのドームに映し出されたこの画像を見た時に深く感動したといい、「まるでWLMの中にある惑星に立って、その夜空を見上げているかのようだった」と語っています。
冒頭の画像はNASAやESA/Webbから2022年11月9日付で公開されました。
本記事は2022年11月16日公開の記事を再構成したものです。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
関連記事
- まばゆい星に隠されそうな淡い銀河 ハッブル宇宙望遠鏡が観測した矮小銀河「PGC 39058」
- 矮小銀河でスターバースト銀河で腕1本の渦巻銀河 ハッブル宇宙望遠鏡が観測した「NGC 178」
- どれだかわかる? ウェッブ宇宙望遠鏡が観測した“しし座”の矮小銀河























