
アメリカが主導する有人月探査計画「Artemis(アルテミス)」で初めての有人ミッションとなる「Artemis II(アルテミスII)」。NASA(アメリカ航空宇宙局)によると、歴史的な約10日間のミッションを終えた宇宙船「Orion(オリオン、オライオン)」が、アメリカ東部夏時間2026年4月10日夕方(日本時間翌11日午前)、地球へ無事に帰還しました。
音速の35倍で大気圏へ再突入し太平洋へ無事着水
NASAによると、アメリカ東部夏時間4月10日19時33分(日本時間翌11日8時33分)、Orion宇宙船はエンジンなどを搭載したサービスモジュールをクルーが搭乗するクルーモジュールから分離(※以下の日時は原則としてアメリカ東部夏時間で表記)。その後、クルーモジュールは19時53分に高度40万フィート(約122キロメートル)で大気圏へ突入しました。
大気圏突入時の速度は音速の約35倍に達し、機体を包み込むプラズマの影響で約6分間の通信途絶(ブラックアウト)が発生しましたが、20時00分に地上との通信が回復。高度約2万3400フィート(約7.1キロメートル)で減速用のパラシュート(ドローグシュート)が、高度約5400フィート(約1.6キロメートル)で3つのメインパラシュートが展開され、Orion宇宙船はアメリカ東部夏時間4月10日20時07分(日本時間翌11日9時07分)にアメリカ西海岸のカリフォルニア州サンディエゴ沖の太平洋へ無事着水しました。
クルー4名は揚陸艦へ移乗 元気な姿を見せる
着水後、回収を担当するアメリカ海軍のドック型輸送揚陸艦「USS John P. Murtha(ジョン・P・マーサ)」から出動した回収部隊がゴムボートでOrion宇宙船のクルーモジュールへ接近し、膨張式のいかだを展開。NASAのReid Wiseman宇宙飛行士、Victor Glover宇宙飛行士、Christina Koch宇宙飛行士、そしてCSA(カナダ宇宙庁)のJeremy Hansen宇宙飛行士の4名は、着水から約1時間半後となる同日21時34分までにOrion宇宙船から無事搬出され、いかだに乗り移りました。
長旅を終えたクルーは海軍のヘリコプターに収容されて揚陸艦へと到着。スタッフのサポートを受けつつ、時折笑顔で手を振るなど元気な様子を見せながら、1人ずつ自らの足で歩いて艦内へと移動しました。クルーは医療チェックを受けた後、テキサス州ヒューストンのジョンソン宇宙センターへと帰還する予定です。





将来のミッションへとつながる半世紀ぶりの月周辺有人飛行
約10日間にわたるミッションのなかでは、地球への帰還直前に宇宙船と地上との通信が一時的に途絶したほか、飛行中には廃水を船外へ排出する排水管のトラブルでトイレの利用が制限されたり、Koch宇宙飛行士の端末が完全に故障したりといった予期せぬトラブルにも見舞われました。
しかし、これらのトラブルはクルーと地上チームの冷静な連携によって適切に対処され、ミッションの進行に影響を与えることはありませんでした。地球から何十万キロメートルも離れたOrion宇宙船という隔絶された環境に置かれた4名のクルーは数々の課題を乗り越え、1972年12月の「Apollo 17(アポロ17号)」以来およそ半世紀ぶりとなる月周辺の有人飛行を成功させただけでなく、かつて1970年4月に「Apollo 13(アポロ13号)」が打ち立てた人類の最遠到達記録をも塗り替え、無事に帰還を果たしました。
2026年3月に発表された新たな方針の下、NASAが2年後の2028年から毎年2回のペースで予定している将来の有人月面着陸や、基地の建設もともなう持続的な有人月面探査、そしてその先の有人火星探査へ向けて、Artemis IIは宇宙探査を大きく前進させるミッションとなりました。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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