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アメリカが主導する有人月探査計画「Artemis(アルテミス)」で初めての有人ミッションとなる「Artemis II(アルテミスII)」。NASA(アメリカ航空宇宙局)によると、人類の最遠到達記録の更新や月面への最接近といった歴史的なフライバイを無事に終え、ミッション7日目を迎えたクルーたちを乗せた宇宙船「Orion(オリオン、オライオン)」は、地球への帰還の途についています。

Artemis IIミッションのOrion宇宙船から撮影された「地球の入り」(Credit: NASA)
【▲ Artemis IIミッションのOrion宇宙船から撮影された「地球の入り」(Credit: NASA)】

隕石衝突時の発光現象を目撃 ISSとの交信も

NASAがアメリカの現地時間2026年4月7日に開催した記者会見では、前日に行われたフライバイに関する新たな成果が報告されました。

NASA科学ミッション本部のKelsey Young氏によると、肉眼での観測が行われた月面の様子について、緑色や茶色の色彩といった画像では判別が難しい特徴が多数報告されており、これらは将来の月面探査に向けた大きな科学的価値をもたらすと期待されています。宇宙船から見て太陽が月に隠された「日食」の最中には、月面に隕石が衝突した際の閃光とみられる発光現象を、クルーは6回にわたって肉眼で目撃したといいます。

また、クルーが撮影した画像のデータ量は、フライバイが実施されたミッション6日目だけでも175GB以上に達しました。従来よりもデータ伝送が高速な光通信システムを用いて地球への送信が続けられており、会見の時点では50GBを受信済みとされています。

さらに、ミッション7日目に入ってからは、Orion宇宙船とISS(国際宇宙ステーション)に滞在する第74次長期滞在クルーとの間で、約15分間にわたる音声のみの交信が実現しました。フライバイ直後にはDonald Trump大統領からの祝福の電話を受けるなど、クルーは歴史的なスケジュールをこなしています。

Artemis IIミッションのOrion宇宙船から撮影された月。中央に見える同心円状の巨大な地形は「オリエンタル盆地(東の海)」で、左下は月の表側、右上は月の裏側。オリエンタル盆地の左にある明るいクレーターは直径約84kmのビュルギウス(Byrgius)(Credit: NASA)
【▲ Artemis IIミッションのOrion宇宙船から撮影された月。中央に見える同心円状の巨大な地形は「オリエンタル盆地(東の海)」で、左下は月の表側、右上は月の裏側。オリエンタル盆地の左にある明るいクレーターは直径約84kmのビュルギウス(Byrgius)(Credit: NASA)】
Artemis IIミッションのOrion宇宙船から撮影された「日食」の様子。太陽の外層大気である太陽コロナや、普段の月の撮影時には暗くて写らないような星々も見えている(Credit: NASA)
【▲ Artemis IIミッションのOrion宇宙船から撮影された「日食」の様子。太陽の外層大気である太陽コロナや、普段の月の撮影時には暗くて写らないような星々も見えている(Credit: NASA)】
約7時間にわたったフライバイで月面の観察と撮影を行うNASAのVictor Glover宇宙飛行士とChristina Koch宇宙飛行士(Credit: NASA)
【▲ 約7時間にわたったフライバイで月面の観察と撮影を行うNASAのVictor Glover宇宙飛行士とChristina Koch宇宙飛行士(Credit: NASA)】

月の重力圏離脱後に帰路で1回目となる軌道修正を実施

NASAによると、Orion宇宙船はアメリカ東部夏時間2026年4月7日13時23分(日本時間翌8日2時23分)に月の重力圏(※)を離脱しました。

アメリカ東部夏時間同日20時03分(日本時間翌8日9時03分)には、地球へ向かう軌道を微調整するための最初の軌道修正燃焼「RTC-1」が実施されています。Orion宇宙船の補助スラスターが15秒間噴射され、秒速1.6フィートの速度変更が正確に行われたことが確認されました。

※…厳密にはSphere of Influence=作用圏、影響圏。ある天体の重力の影響が他の天体の重力よりも支配的になる領域を指す。

着水は日本時間11日午前の予定 回収に向けた動きも

歴史的なArtemis IIミッションは、いよいよ大詰めを迎えています。ミッション8日目にはOrion宇宙船の手動操縦のデモンストレーションをはじめ、重力がかかる地上の環境へ戻る際に宇宙飛行士の血圧や血流を維持するための専用ウェアのテストなどが予定されています。

Artemis IIミッションのOrion宇宙船の太陽電池パドルに取り付けられているカメラで撮影された「地球の入り」(Credit: NASA)
【▲ Artemis IIミッションのOrion宇宙船の太陽電池パドルに取り付けられているカメラで撮影された「地球の入り」(Credit: NASA)】

NASAのJared Isaacman長官によれば、Orion宇宙船は会見の時点で地球から約22万9000マイル(約36万8500キロメートル)の位置を飛行しており、ミッション10日目となるアメリカ東部夏時間4月10日20時06分(日本時間翌11日9時06分)頃にアメリカ西海岸沖の太平洋へ着水する予定です。

回収を担当するアメリカ海軍のドック型輸送揚陸艦「USS John P. Murtha(ジョン・P・マーサ)」はすでにカリフォルニア州サンディエゴを出港しており、目標海域の天候も良好な予報だということです。

関連画像・映像

Artemis IIミッションのOrion宇宙船から撮影された「地球の入り」(Credit: NASA)
【▲ Artemis IIミッションのOrion宇宙船から撮影された「地球の入り」(Credit: NASA)】
Artemis IIミッションのOrion宇宙船から撮影された「地球の入り」(Credit: NASA)
【▲ Artemis IIミッションのOrion宇宙船から撮影された「地球の入り」(Credit: NASA)】
Artemis IIミッションのOrion宇宙船から撮影された「地球の出」。月の暗い夜側から三日月形に輝く地球が現れてくる様子が捉えられた(Credit: NASA)
【▲ Artemis IIミッションのOrion宇宙船から撮影された「地球の出」。月の暗い夜側から三日月形に輝く地球が現れてくる様子が捉えられた(Credit: NASA)】
Artemis IIミッションのOrion宇宙船の太陽電池パドルに取り付けられているカメラで撮影された「日食」(Credit: NASA)
【▲ Artemis IIミッションのOrion宇宙船の太陽電池パドルに取り付けられているカメラで撮影された「日食」(Credit: NASA)】
Artemis IIミッションのOrion宇宙船から撮影された月の明暗境界線付近(Credit: NASA)
【▲ Artemis IIミッションのOrion宇宙船から撮影された月の明暗境界線付近(Credit: NASA)】
日食グラスを装着したArtemis IIミッションのクルー。2023年の金環日食と2024年の皆既日食のためにNASAが製作したもので、フライバイ中に生じた日食をOrion宇宙船から観察する際に使用された(Credit: NASA)
【▲ 日食グラスを装着したArtemis IIミッションのクルー。2023年の金環日食と2024年の皆既日食のためにNASAが製作したもので、フライバイ中に生じた日食をOrion宇宙船から観察する際に使用された(Credit: NASA)】

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典