将来は衛星の修理も!? 2025年打ち上げ予定の宇宙機「MRV」に搭載される2本のロボットアーム

こちらはNorthrop Grumman(ノースロップ・グラマン)傘下のSpaceLogistics(スペース・ロジスティクス)が打ち上げを予定している宇宙機「Mission Robotic Vehicle(ミッション・ロボティック・ビークル、MRV)」に搭載される2本のロボットアーム。金色のサーマルブランケットに包まれたアームが手前側と奥側に展開されている様子が写っています。

Northrop Grumman(ノースロップ・グラマン)の宇宙機「MRV(Mission Robotics Vehicle)」に搭載される2本のロボットアーム
【▲ Northrop Grumman(ノースロップ・グラマン)の宇宙機「MRV(Mission Robotics Vehicle)」に搭載される2本のロボットアーム(Credit: U.S. Naval Research Laboratory)】

人工衛星の寿命延長サービスを提供 将来の検査・修理も視野に

MRVの登場は人工衛星の運用が大きく変わるきっかけのひとつになるかもしれません。人工衛星は基本的に推進剤が尽きれば運用を終えざるを得ませんでしたが、SpaceLogisticsはMRVを使って静止軌道(GEO)で運用されている通信衛星などの寿命を延長するサービスの提供を予定しています。

具体的には、MRVは電気推進とドッキング機構を備えた小さな宇宙機「Mission Extension Pod(ミッション・エクステンション・ポッド、MEP)」と連携して衛星の寿命延長を行います。MEPは2トンの衛星の寿命を6年延長可能とされています。

MRVは打ち上げ後のMEPをロボットアームで捕獲し、ランデブーした顧客の衛星にMEPを取り付け。顧客はMEPを所有・制御し、MEPの電気推進で衛星の軌道を維持する、というわけです。押すか引くかの違いはありますが、ガス欠で動けない車を別の車で牽引するイメージが近いかもしれません。

SpaceLogisticsが打ち上げを予定している「MRV」(左)と「MEP」(中央)の想像図。MEPは顧客の衛星(右)にドッキングして最大6年間寿命を延長させる能力を持つとされる
【▲ SpaceLogisticsが打ち上げを予定している「MRV」(左)と「MEP」(中央)の想像図。MEPは顧客の衛星(右)にドッキングして最大6年間寿命を延長させる能力を持つとされる(Credit: Northrop Grumman)】

【▲ 動画:「MRV」と「MEP」で提供される寿命延長サービスの概要】
(Credit: Northrop Grumman)

【▲ 動画:「MRV」に搭載されるロボットアームの動作試験の様子(10倍速)】
(Credit: Northrop Grumman)

SpaceLogisticsが衛星の寿命延長サービスを提供するのはMRV/MEPが初めてではありません。同社はこれまでに「Mission Extension Vehicle(ミッション・エクステンション・ビークル、MEV)」という宇宙機を2機打ち上げており、2020年2月と2021年4月にIntelsat(インテルサット)の通信衛星とドッキングすることに成功。それぞれ5年間の寿命延長サービスを提供しています。MEPはMEVを小型化し、一部の能力をMRVにオフロードした形です。

また、MRVのロボットアームはMEPの捕獲・取り付けだけでなく、ツールを交換して顧客の衛星の検査や修理に使用することも想定されています。あたかも2本の腕で道具を操り文明を築き上げてきた人類のように、2本のロボットアームを備えたMRVは従来不可能だった軌道上サービスを実現させる可能性を秘めているのです。MRV/MEPはSpaceX(スペースX)の「Falcon 9(ファルコン9)」ロケットで2025年に打ち上げられる予定です。

 

Source

  • Northrop Grumman - Northrop Grumman One Step Closer to Delivering Mission Robotic Vehicle for On-Orbit Satellite Servicing Missions

文・編集/sorae編集部