米国のノースロップ・グラマン社は2月21日、傘下のスペース・ロジスティクス社と豪州の通信事業者オプタス社との間で、人工衛星の寿命延長サービスに関する契約が締結されたことを発表しました。今回締結されたのは、人工衛星に取り付けて運用期間を延長するために開発された新しい宇宙機の販売契約と打ち上げ契約です。
■顧客の衛星の運用期間を延長する「MEP」&顧客の衛星にMEPをドッキングさせる「MRV」
地球を周回する人工衛星は、推進剤を消費して軌道を維持しています。仮に衛星としての機能に問題がないとしても、これまでは推進剤が尽きれば運用を終えざるを得ませんでした。
スペース・ロジスティクスが提供するのは、こうした「推進剤さえあればまだまだ使える衛星」の運用期間を延長するサービスです。同社は2020年から「MEV」(Mission Extension Vehicle、ミッション・エクステンション・ビークル)という無人宇宙機を使った寿命延長サービスの提供を始めています。
MEVはまず顧客の人工衛星とランデブーし、次にドッキング機構を使って顧客の衛星とドッキングします。一体となった2機は、MEVに搭載されている電気推進システムを使って軌道が維持されるという仕組みです。
MEVによって提供される寿命延長サービスは5年間ですが、MEV自体の運用期間は15年間で、別の衛星のもとへ移動してサービスを提供し続けることも可能とされています。
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今回オプタスとの間で締結されたのは、MEVから発展した「MEP」(Mission Extension Pod、ミッション・エクステンション・ポッド)および「MRV」(Mission Robotic Vehicle、ミッション・ロボティック・ビークル)という大小2種類の宇宙機を使った寿命延長サービスです。
【▲ MEPおよびMRVの打ち上げから顧客の衛星へのドッキングまでを示した動画】
(Credit: Northrop Grumman)
小さいほうのMEPは「顧客の衛星の寿命を延長する」というサービスの根幹を担う宇宙機です。MEPはMEVと同じく顧客の衛星にドッキングし、電気推進システムを使って自身と顧客の衛星の軌道を維持します。MEPは顧客が所有・制御し、標準的な重量2トンの静止衛星の寿命を6年間延長することが可能です。
もう一つのMRVは「MEPを顧客の衛星にドッキングさせる」役割を担います。打ち上げられたMEPは顧客の衛星に近付く軌道まで移動しますが、自らドッキングすることはなく、その軌道で待機します。そこにロボットアームを備えたMRVが合流して、MEPをキャッチ。MEPを搭載したMRVは顧客の衛星に接近し、ロボットアームを使ってMEPを取り付ける、という流れです。
発表によると、最初のMRVとMEPはスペースXによって2024年に打ち上げられます。MEPは複数打ち上げられますが、このうちの1機がオプタスの通信衛星「Optus D3」(2009年打ち上げ)に取り付けられるとのことです。MEPは他の顧客向けにも提供することが決まっている模様で、発表時点で2025年分の予定表はすでに埋まっており、2026年分も間もなく埋まる状況とされています。
なお、MEVやMEP&MRVは「外付けの推進システム」を使った寿命延長サービスですが、スペース・ロジスティクスは2025年以降に「MRP」(Mission Refueling Pod、ミッション・リフュエリング・ポッド)という宇宙機を使って、互換性のある顧客の衛星に対して「軌道上で推進剤を補給」するサービスの提供開始を目指しているとのことです。
Source
- Image Credit: Northrop Grumman
- Northrop Grumman - SpaceLogistics Announces Launch Agreement with SpaceX and First Mission Extension Pod Contract with Optus
- Northrop Grumman - SpaceLogistics
- Optus - Optus D3 Satellite
文/松村武宏
Last Updated on 2022/03/25