アストロスケールが実証衛星で撮影した大型スペースデブリの連続画像を公開

株式会社アストロスケールは2024年7月30日、アストロスケールの商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J(アドラスジェイ)」が観測対象のスペースデブリ(宇宙ごみ)に対する周回観測を実施した際に撮影した連続画像を公開しました。【最終更新:2024年7月30日14時台】

【▲ アストロスケールの商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」が2024年7月15日の周回観測(2回目)で撮影した観測対象の大型デブリ(H-IIAロケット15号機の上段)の連続画像。撮影順は左上→右上→左下→右下(Credit: Astroscale)】
【▲ アストロスケールの商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」が2024年7月15日の周回観測(2回目)で撮影した観測対象の大型デブリ(H-IIAロケット15号機の上段)の連続画像。撮影順は左上→右上→左下→右下(Credit: Astroscale)】
【▲ アストロスケールの商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」が2024年7月16日の周回観測(3回目)で撮影した観測対象の大型デブリ(H-IIAロケット15号機の上段)の連続画像。撮影順は左上→右上→左下→右下(Credit: Astroscale)】
【▲ アストロスケールの商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」が2024年7月16日の周回観測(3回目)で撮影した観測対象の大型デブリ(H-IIAロケット15号機の上段)の連続画像。撮影順は左上→右上→左下→右下(Credit: Astroscale)】

ADRAS-Jはデブリ除去の新規宇宙事業化を目的とした宇宙航空研究開発機構(JAXA)の取り組みである「商業デブリ除去実証(CRD2)」の実証衛星です。CRD2は大型デブリへの接近・近傍制御と情報取得を実証するフェーズIと、大型デブリの除去を実証するフェーズIIの2段階に分かれています。ADRAS-Jは2022年3月にフェーズIの契約相手方として選定されたアストロスケールが開発と運用を担っています。なお、アストロスケールはフェーズIIの契約相手方にも選定されており、捕獲用のロボットアームを搭載する実証衛星「ADRAS-J2」の開発が進められています。

日本時間2024年2月18日夜にRocket Lab(ロケットラボ)の「Electron(エレクトロン)」ロケットで打ち上げられたADRAS-Jは、観測対象のデブリである「H-IIA」ロケット15号機の上段(2段目、全長約11m・直径約4m・重量約3トン)への接近を開始。4月17日には後方数百mまで接近することに、5月23日には後方約50mまで接近することに成功し、定点観測を実施していました。H-IIA15号機は2009年1月に温室効果ガス観測技術衛星「いぶき(GOSAT)」の打ち上げに使用されたロケットで、同ロケットの上段は大型デブリとなって地球を周回し続けています。

【▲ 観測対象のデブリである「H-IIA」ロケット15号機の上段に接近する商業デブリ除去衛星「ADRAS-J」の想像図(Credit: Astroscale)】
【▲ 観測対象のデブリである「H-IIA」ロケット15号機の上段に接近する商業デブリ除去衛星「ADRAS-J」の想像図(Credit: Astroscale)】

2024年6月19日にはADRAS-Jによる対象デブリの周回観測が実施されましたが、3分の1(120度)程度周回するまでは安定して飛行したものの、デブリとの相対姿勢制御の異常が検出されたことから、衝突を回避するために衛星は一旦安全な距離まで自律的に退避していました。

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アストロスケールの実証衛星が大型スペースデブリの周回観測を実施(2024年7月10日)

アストロスケールやJAXAによると、デブリから約50mまで再び接近したADRAS-Jによる2回目の周回観測が2024年7月15日に、3回目の周回観測が翌7月16日に実施されました。冒頭に掲載したのはその時に撮影された連続画像をつなぎ合わせて作成されたものです。なお、対象のデブリは重力傾斜トルク(※)によって、衛星搭載時の台座にあたる「PAF(Payload Attach Fitting)」と呼ばれる部分を地球の中心方向に向けた直立姿勢(言い換えれば地球の表面に対して直立するような姿勢)を維持しています。連続画像ではデブリが回転しているようにも見えますが、実際にはADRAS-Jのほうが周回しながら撮影を行っています。

※…軌道上の細長い物体の各部分に働く重力の差によって生じる、物体の長軸を天体の中心方向へ向けるように作用するトルクのこと。

【▲ 2024年7月15日の周回観測(2回目)で撮影した連続画像を使って作成された動画(望遠)
(Credit: Astroscale)

【▲ 2024年7月16日の周回観測(3回目)で撮影した連続画像を使って作成された動画(望遠)】
(Credit: Astroscale)

定点観測に続いて周回観測にも成功したことで、衛星分離から15年経ったデブリの全体の様子が確認されました。特にCRD2のフェーズIIにおける捕獲時の対象部位となるPAFとその周辺の現状が確認できたことは重要で、捕獲システムを設計・検証する上で重要な知見となります。今後はアストロスケールが企画・実施する企業ミッションに続き、ADRAS-Jを対象デブリに衝突しない軌道へと遷移させてミッション全体が終了する予定です。

 

Source

  • Astroscale - アストロスケールの商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」、世界で初めてデブリの周囲の飛行に成功
  • JAXA - 商業デブリ除去実証フェーズI 「周回観測」の画像を公開

文・編集/sorae編集部