火星探査車が予期せぬ地形に遭遇。その名も「ワニの背中」
2022年3月15日に撮影されたアイオリス山麓の「ゲーターバック」(Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS)
【▲ 2022年3月15日に撮影されたアイオリス山麓の「ゲーターバック」(Credit: /JPL-Caltech/MSSS)】

こちらはアメリカ航空宇宙局()の探査車「Curiosity()」が2022年3月15日に撮影した画像です。現在のゲール・クレーター中央にそびえるアイオリス山(シャープ山、高さ約5500m)を登りながら探査活動を行っています。

画像には、アイオリス山の麓に広がるグリーンヒュー・ペディメント(Greenheugh Pediment)と名付けられた緩やかな傾斜地の様子が捉えられています。グリーンヒュー・ペディメントの表面は砂岩の瓦礫に覆われているのですが、によれば予期せぬ地形に遭遇してしまったといいます。

それは、長年の風食作用によって鋭く磨き上げられた風稜石(ventifact)が集中しているエリアです。冒頭の画像を見ると、傾斜地の表面が無数の風稜石に覆われていることがわかります。その鱗のような外観から、の運用チームはこの地形を「ゲーターバック(gator-back)」と呼んでいるといいます。ゲーターバックは日本語で「ワニの背中」を意味します。

2017年3月に撮影されたキュリオシティのホイール。画像右側のホイールが損傷していることがわかる(Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS)
【▲ 2017年3月に撮影されたキュリオシティのホイール。画像右側のホイールが損傷していることがわかる(Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS)】

キュリオシティのプロジェクトマネージャーを務めるNASAジェット推進研究所(JPL)のMegan Linさんは「この地形がキュリオシティのホイールにとって良くないことは明らかでした」と語ります。というのも、キュリオシティのホイールはミッションの早い段階ですでに風稜石による損傷を受けているためです。それ以来、運用チームはホイールの損傷を抑えるためにキュリオシティのアルゴリズムを改良したり、風稜石を避けるルートを選んだりしてきました。

NASAによると、キュリオシティの進路上に今回現れたゲーターバック地形は、運用チームがこれまでに見たことがないくらい多くの風稜石に覆われているといいます。通行できないことはないものの、運用チームはキュリオシティをゲーターバックから遠ざけて、新たなルートを立案することに決めました。

なお、キュリオシティは2022年8月で着陸から10周年を迎えます。避けられないホイールの損傷に加えてロボットアームにも劣化の兆候があらわれているものの、数十億年前のゲール・クレーターで水によって形成された様々な堆積層を調べるために、キュリオシティはアイオリス山を登り続けます。

2020年2月26日に撮影されたキュリオシティのセルフィー。左奥の丘はグリーンヒュー・ペディメントの一部(Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS)
【▲ 2020年2月26日に撮影されたキュリオシティのセルフィー。左奥の丘はグリーンヒュー・ペディメントの一部(Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS)】

 

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  • Image Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS
  • NASA/JPL - NASA's Curiosity Mars Rover Reroutes Away From ‘Gator-Back' Rocks

文/松村武宏