108億年前の宇宙で密集していた巨大なブラックホールを発見 すばる望遠鏡などの観測データから

通常は数億光年間隔で存在していた初期宇宙の超大質量ブラックホール(超巨大ブラックホールとも)が、わずか4000万光年という狭い範囲に密集して存在する場所を発見したとする研究成果を、日本の研究者らのチームが発表しました。

ブラックホールや銀河・銀河団の理解を変える“宇宙のヒマラヤ”

研究チームが発見したのは、「くじら座」の方向、約108億年前の初期宇宙に存在していた11個のクエーサー(※)です。

すばる望遠鏡などの観測データを分析したところ、これらのクエーサーは銀河の集団から約2500万光年も離れた、銀河間に広がる中性ガスと電離ガスの境界に存在していました。研究チームはこの構造を「宇宙のヒマラヤ(Cosmic Himalayas)」と呼んでいます。

今回の発見は、ブラックホールの成長や銀河の進化、銀河団のような大規模構造の形成などに関する理解の見直しにつながるものとして注目されます。

※…クエーサー:銀河中心部の狭い領域から強い電磁波を放射する活動銀河核(AGN)のなかでも特に明るいタイプのこと。クエーサーを含め、活動銀河核の原動力は超大質量ブラックホールだと考えられています。

今回発見されたクエーサーの位置と拡大画像を示した図。赤色はクエーサーの密度、青色はその周囲に存在する数百個の銀河の密度を表している。背景画像はすばる望遠鏡で取得したもの
【▲ 今回発見されたクエーサーの位置と拡大画像を示した図。赤色はクエーサーの密度、青色はその周囲に存在する数百個の銀河の密度を表している。背景画像はすばる望遠鏡で取得したもの(Credit: 国立天文台/SDSS; Liang et al.)】
×印でクエーサーの位置を示した図。黒色は銀河の等密度線。背景の色は中性ガスの密度に対応していて、赤色ほど高密度、青色ほど低密度(すなわち電離ガスが豊富)であることを示している
【▲ ×印でクエーサーの位置を示した図。黒色は銀河の等密度線。背景の色は中性ガスの密度に対応していて、赤色ほど高密度、青色ほど低密度(すなわち電離ガスが豊富)であることを示している(Credit: 国立天文台 / SDSS, Liang et al.)】

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典



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