
通常は数億光年間隔で存在していた初期宇宙の超大質量ブラックホール(超巨大ブラックホールとも)が、わずか4000万光年という狭い範囲に密集して存在する場所を発見したとする研究成果を、日本の研究者らのチームが発表しました。
ブラックホールや銀河・銀河団の理解を変える“宇宙のヒマラヤ”
研究チームが発見したのは、「くじら座」の方向、約108億年前の初期宇宙に存在していた11個のクエーサー(※)です。
すばる望遠鏡などの観測データを分析したところ、これらのクエーサーは銀河の集団から約2500万光年も離れた、銀河間に広がる中性ガスと電離ガスの境界に存在していました。研究チームはこの構造を「宇宙のヒマラヤ(Cosmic Himalayas)」と呼んでいます。
今回の発見は、ブラックホールの成長や銀河の進化、銀河団のような大規模構造の形成などに関する理解の見直しにつながるものとして注目されます。
※…クエーサー:銀河中心部の狭い領域から強い電磁波を放射する活動銀河核(AGN)のなかでも特に明るいタイプのこと。クエーサーを含め、活動銀河核の原動力は超大質量ブラックホールだと考えられています。


文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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参考文献・出典
- 国立天文台すばる望遠鏡 - 宇宙最大級の超巨大ブラックホールの集団を発見:宇宙の物質分布に新たな謎を投げかける
- 東京大学宇宙線研究所 - 【プレスリリース】宇宙最大級の超巨大ブラックホールの集団を発見――宇宙の物質分布に新たな謎を投げかける――
- Liang et al. - Cosmic Himalayas: The Highest Quasar Density Peak Identified in a 10,000 deg Sky with Spatial Discrepancies between Galaxies, Quasars, and IGM HI (arXiv)