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微惑星どうしの衝突再び? ハッブル宇宙望遠鏡がフォーマルハウト周囲で新たな痕跡を発見

こちらは、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)が観測した一等星「フォーマルハウト(Fomalhaut)」のデブリ円盤。

2012年と2023年にハッブル宇宙望遠鏡の「宇宙望遠鏡撮像分光器(STIS)」で取得したデータを使って作成されました。

ハッブル宇宙望遠鏡(HST)が観測したフォーマルハウトのデブリ円盤。2012年と2023年に「宇宙望遠鏡撮像分光器(STIS)」で取得したデータを使って作成したもの(Credit: NASA, ESA, P. Kalas (UC Berkeley), J. DePasquale (STScI))
【▲ ハッブル宇宙望遠鏡(HST)が観測したフォーマルハウトのデブリ円盤。2012年と2023年に「宇宙望遠鏡撮像分光器(STIS)」で取得したデータを使って作成したもの(Credit: NASA, ESA, P. Kalas (UC Berkeley), J. DePasquale (STScI))】

星を取り巻く岩石・氷の破片や塵(ダスト)でできた円盤を観測するために、フォーマルハウトそのものからの光はコロナグラフを使って遮られています。

瞳のような暗い部分がコロナグラフで隠された部分で、中心にフォーマルハウトが位置しています。

ここに写っている小さな光点が今回の主題なのですが、どれがそうなのかわかりますでしょうか?

幻となった太陽系外惑星「フォーマルハウトb」

みなみのうお座(Piscis Austrinus)の星図。左端の明るい星がフォーマルハウト(Credit: E. Slawik/NOIRLab/NSF/AURA/M. Zamani)
【▲ みなみのうお座(Piscis Austrinus)の星図。左端の明るい星がフォーマルハウト(Credit: E. Slawik/NOIRLab/NSF/AURA/M. Zamani)】

みなみのうお座の一等星フォーマルハウトは、約25光年先にある比較的若い星です。形成から約4億年が経っているとみられていて、その周囲をデブリ円盤に取り囲まれていることが知られています。

冒頭の画像でも見えるデブリ円盤のリング状の構造は、半径約120天文単位(太陽から地球までの距離の約120倍)の大きさがあります。

かつてフォーマルハウトには、リング状構造の近くに「フォーマルハウトb(Fomalhaut b)」と呼ばれた太陽系外惑星が存在すると考えられていました。

ハッブル宇宙望遠鏡が2004年と2006年に観測したデブリ円盤の画像に、それらしき光点が写っていたからです。

ところが、この光点は2014年の観測では確認されず、まるで消滅してしまったかのようでした。

ハッブル宇宙望遠鏡による観測結果に基づき、当初は太陽系外惑星と解釈された塵の雲が拡散していく過程を示した図(右)。最初に観測された2004年の時点では衝突からそれほど時間が経っていなかったとみられている(Credit: NASA, ESA, and A. Gáspár and G. Rieke (University of Arizona))
【▲ ハッブル宇宙望遠鏡による観測結果に基づき、当初は太陽系外惑星と解釈された塵の雲が拡散していく過程を示した図(右)。最初に観測された2004年の時点では衝突からそれほど時間が経っていなかったとみられている(Credit: NASA, ESA, and A. Gáspár and G. Rieke (University of Arizona))】

2020年に発表された研究論文では、直径200km程度の微惑星どうしの巨大衝突によって一時的に生じた塵の雲が、フォーマルハウトの光を反射していたと説明されています。

当時の研究では、このような塵の雲を生じさせる衝突が発生する確率は10万年に1回か、それ以上に低いと見積もられていました。そのため、ハッブル宇宙望遠鏡は偶然にもまれな衝突の痕跡を観測していた……と考えられていたのです。

フォーマルハウトのデブリ円盤に再出現した塵の雲

今回、カリフォルニア大学バークレー校のPaul Kalasさんたち研究チームは、2023年にハッブル宇宙望遠鏡が実施したフォーマルハウトのデブリ円盤の観測で、新たな塵の雲が見つかったとする研究成果を発表しました。

2つの塵の雲を区別するため、以前見つかったものは「cs1」、今回報告されたものは「cs2」と呼ばれています(※)。ハッブル宇宙望遠鏡によるフォーマルハウトの観測は2014年が最後だったので、cs2はそれ以降の9年間のどこかの時点で出現したとみられています。

※…csは「circumstellar source」の略、日本語で表せば「星周光源」。

次の画像は、冒頭の画像に注釈と拡大画像を追加したもの。★印で位置が示されたフォーマルハウトの右上に、cs1とcs2が写っていることがわかります(※cs1とcs2が同時に観測されたように見えますが、冒頭でも触れた通りこの画像は2012年と2023年の観測データを組み合わせて作成したものなので、実際には2023年の時点でcs1はすでに観測できなくなっています)

ハッブル宇宙望遠鏡(HST)が観測したフォーマルハウトのデブリ円盤、注釈入りバージョン。2012年の「cs1」の位置と、2023年の「cs2」の位置が示されている。※cs1およびcs2については記事本文を参照(Credit: NASA, ESA, P. Kalas (UC Berkeley), J. DePasquale (STScI))
【▲ ハッブル宇宙望遠鏡(HST)が観測したフォーマルハウトのデブリ円盤、注釈入りバージョン。2012年の「cs1」の位置と、2023年の「cs2」の位置が示されている。※cs1およびcs2については記事本文を参照(Credit: NASA, ESA, P. Kalas (UC Berkeley), J. DePasquale (STScI))】

まれにしか観測されないと思われていた現象が、わずか20年ほどの間に2回も起きたことになりますが、そのおかげで研究者たちは衝突する天体の性質やその数をより正確に推定できるようになりました。

研究チームの見積もりでは、cs1やcs2として観測された塵の雲を形成したのは直径60km程度の微惑星どうしの衝突で、このサイズの天体はフォーマルハウトを3億個も周回していると推定されています。

それでもなお、謎は残されています。そのひとつは、前述した短い発生間隔です。他にも、発生場所の謎があります。cs1とcs2は広大なデブリ円盤のなかでも非常に近接した場所で発生しましたが、衝突がランダムに発生するのであれば、もっと離れた場所で起きていてもおかしくありません。

フォーマルハウトのデブリ円盤における微惑星どうしの衝突を描いたCGイメージ。1~2は接近する微惑星の様子、3は衝突直後の様子、4はフォーマルハウトの放射圧で拡散していく塵の粒子を示している(Credit: NASA, ESA, STScI, R. Crawford (STScI))
【▲ フォーマルハウトのデブリ円盤における微惑星どうしの衝突を描いたCGイメージ。1~2は接近する微惑星の様子、3は衝突直後の様子、4はフォーマルハウトの放射圧で拡散していく塵の粒子を示している(Credit: NASA, ESA, STScI, R. Crawford (STScI))】

当初は惑星だと思われていたcs1は、数年の間に膨張しながら徐々に暗くなっていく様子が観測されていました。cs2も同様の変化を示していくとみられていますが、cs2の出現位置はcs1よりもリング状構造の領域に近いことから、cs2を構成する物質が他の物質と衝突してさらに多くの塵が生じ、周辺が明るくなる可能性もあるといいます。

Kalasさんたちはハッブル宇宙望遠鏡を使用して、今後3年間にわたってcs2を追跡観測する予定です。また、塵の雲に氷(水の氷)が含まれているかどうかを確かめるために、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の「近赤外線カメラ(NIRCam)」による観測を通じて、塵の粒子の大きさや組成を明らかにすることも予定しているということです。

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典