
こちらは、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が観測した、「Apep(アペプ)」と呼ばれる天体。
じょうぎ座の方向、約8000光年先にあります。

天体のカタログ名では「2XMM J160050.7–514245」などと呼ばれますが、中心付近の構造がとぐろを巻いたヘビを思わせることから、天文学者は古代エジプトの神にちなんだApepと呼ぶようになりました。
周期的に生成された塵の殻構造が三重連星を取り囲む
Apepの正体は、中心にある大質量星の三重連星と、その周りを取り囲む塵(ダスト)の殻構造です。
【▲ 3Dモデルで示されたApepを取り巻く4重の殻構造(動画)(Credit: Image: NASA, ESA, CSA, STScI; Simulation: Yinuo Han (Caltech), Ryan White (Macquarie University); Visualization: Christian Nieves (STScI); Image Processing: Alyssa Pagan (STScI))】
三重連星は、それぞれ太陽10~20個分の質量があるウォルフ・ライエ星(※)の連星と、太陽40~50個分の質量がある超巨星で構成されています。もともとはウォルフ・ライエ星のほうが超巨星よりも重かったものの、周囲の空間へ物質を放出することで質量の大部分を失いました。
※…大質量の恒星であるO(オー)型星が進化した姿。星の外層から大量の水素を恒星風として放出して失ったことで、高温の内層がむき出しになっていると考えられている。
約190年周期で公転するApepのウォルフ・ライエ星の連星は、1回の公転ごとに約25年間接近しています。この時に互いの恒星風が衝突することで、塵が生成されます。塵の大部分は結晶構造を持たないアモルファスカーボン(無定形炭素)でできています。
生み出された塵は周囲の空間へと広がっていきますが、塵を生成する期間と生成しない期間が連星の公転運動にあわせて交互に訪れるため、入れ子状の殻構造が形作られていくことになります。

Apepの殻構造はESO=ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡(VLT)による観測で発見されましたが、当初は1つしか確認されておらず、外側の殻は存在する可能性が指摘されていたのみでした。
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡に搭載されている観測装置のひとつ「中間赤外線観測装置(MIRI)」によるApepの観測では、VLTが捉えたものも含めて、約700年の間に形成された全部で4つの殻が確認されました。
また、これらの殻には全体で円錐形を描くような“穴”が空いていることもわかりました。この穴は3番目の星である超巨星が生じさせたとみられています。

ウォルフ・ライエ星は恒星としての生涯の最後に超新星爆発を起こし、ガンマ線バーストを伴いつつブラックホールを形成する可能性もあります。こうして周囲に放出された物質は、やがて新たな恒星や惑星の材料となっていきます。
私たち人間を形作る様々な元素も、恒星内部の核融合反応や超新星爆発などを通じて生成されてきました。Apepで起きている物質の放出を研究することは、私たちの起源を知ることにもつながるのです。
冒頭の画像はNASAから2025年11月19日付で公開されています。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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参考文献・出典
- NASA - Webb First to Show 4 Dust Shells 'Spiraling' Apep, Limits Long Orbit
- ESO - Cosmic Serpent
- Han et al. - The Formation and Evolution of Dust in the Colliding-wind Binary Apep Revealed by JWST (The Astrophysical Journal)
























