米航空宇宙局(NASA)は現地時間5月28日、ミシシッピ州にあるステニス宇宙センターで次世代大型ロケット「スペース・ローンチ・システム(SLS)」の第1段ロケット・エンジンとして使用される「RS-25」の、2回目となる燃焼試験を実施した。

RS-25はステニス宇宙センターにあるA-1と呼ばれる試験台に取り付けられ、450秒にわたって燃焼し、無事に完了した。今回の試験は2回目で、1回目は今年1月9日に実施されている。今後、この夏を通じ、8回に分け、累計3500秒間にわたる燃焼試験が実施されるという。また別の開発用エンジンを用いて、10回、累計4500秒間にわたる燃焼試験も行われる予定で、さらに並行して新しい制御装置の試験も実施されるという。

また1月の試験後、A-1試験台には周囲に水を撒く冷却システム(ウォーター・カーテン)に改良が加えられ、今回の燃焼試験はその性能を確認する意味もあったという。

SLSは現在NASAとボーイング社によって開発が進められているロケットで、完成すれば歴史上最も強力な打ち上げ能力を持つロケットになる。その第1段ロケット・エンジンには、かつてスペース・シャトルのメイン・エンジン(SSME)として使われていたRS-25が流用されることになっている。

ただ、スペース・シャトルはRS-25を3基並べて装着していたが、SLSでは4基並べることになるため、それぞれのノズルが受ける温度は高くなり、また加速が大きくなるため、推進剤がエンジンに流れ込む際の圧力もシャトルに比べて高くなる。さらにエンジンに流れ込む液体酸素の温度もより低くなるなど、スペース・シャトルとSLSとでは作動環境に大きな違いがあるため、いくつか改修が施されている。

SLSは打ち上げ能力70tの構成と、130tの構成の、大きく2種類が開発される予定になっている。まず最初に開発されるのは70t構成の機体で、大型の無人探査機を火星や小惑星に送ったり、宇宙飛行士を乗せたオリオン宇宙船を地球低軌道や月、地球近傍小惑星に送り込むことが可能になる。そして2030年ごろには130t構成の機体が完成する予定で、実現すれば史上最大の打ち上げ能力を持つロケットになり、いよいよ火星や小惑星への有人着陸が視野に入る。

スペース・ローンチ・システムは基本的にスペースシャトルから部品を流用して構築される。例えばコア・ステージと呼ばれる第1段のタンクは、スペースシャトルの外部タンク(ET)を改修されたものが用いられ、ロケットエンジンもスペースシャトルに使われていたRS-25が装備される。その両脇に装着されるブースターも、やはりスペースシャトルで使われていた固体ロケット・ブースター(SRB)を流用し、セグメント数を増やしてパワーアップしたものだ。

コア・ステージの上部には、ミッションの目的や打ち上げるものの大きさ、質量に応じて用意された、何種類かの上段を搭載する。これらのバリエーションはそれぞれブロックIやブロックIAといった呼び名が付けられており、さらに有人宇宙船を搭載する型や、貨物のみを搭載する型にも分かれている。

ただ、第1段のエンジンは、いずれは設計を簡略化したRS-25Eに切り替えられる予定で、またSRBも、いずれは液体燃料ロケットを使ったブースターに切り替えるといった発展性が計画されている。

スペース・ローンチ・システムの開発が予定通りに計画が進めば、2018年11月ごろに無人のオリオン宇宙船を載せて、試験打ち上げが行われる予定だ。またその2年後には有人のオリオン宇宙船の打ち上げが実施され、そして2030年代中には、火星への有人飛行が実現する計画となっている。

 

■Steamy Summer Begins for SLS with RS-25 Test | NASA
http://www.nasa.gov/image-feature/steamy-summer-begins-for-sls-with-rs-25-test