米民間企業が月着陸機「Athena」の月周回軌道投入に成功 着陸は日本時間3月7日未明
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アメリカの民間企業Intuitive Machines(インテュイティブ・マシーンズ)は2025年3月3日付で、同社の月着陸ミッション「IM-2」の月着陸機「Athena」を月周回軌道へ投入させることに成功したと発表しました。

Athenaは日本時間2025年2月27日にSpaceX(スペースX)の「Falcon 9(ファルコン9)」ロケットで打ち上げられ、月へ向かう軌道に投入されました。Intuitive Machinesは予定されていた3回の軌道修正操作を実行した後、日本時間2025年3月3日21時27分からメインエンジンを492秒間噴射させて、Athenaを月周回軌道に投入しました。同社からは月周回軌道投入後にAthenaのカメラで撮影された画像が公開されています。

Intuitive Machinesによると、Athenaの月面着陸は日本時間2025年3月7日2時32分の見込みとなっており、着陸のライブ配信は同社とNASA=アメリカ航空宇宙局が日本時間同日1時30分から行うということです。

月周回軌道に投入された月着陸機「Athena」のカメラで撮影された月と地球(フィッシュアイレンズで撮影した画像を補正したもの)(Credit: Intuitive Machines)
【▲ 月周回軌道に投入された月着陸機「Athena」のカメラで撮影された月と地球(フィッシュアイレンズで撮影した画像を補正したもの)(Credit: Intuitive Machines)】
月着陸機「Athena」のカメラで撮影された月面。画像下部に一部が写っている大きなクレーターはベルコビッチA・クレーター(Bel'kovich A、直径約57km)(Credit: Intuitive Machines)
【▲ 月着陸機「Athena」のカメラで撮影された月面。画像下部に一部が写っている大きなクレーターはベルコビッチA・クレーター(Bel'kovich A、直径約57km)(Credit: Intuitive Machines)】

なお、日本時間2025年3月2日にはアメリカの民間企業Firefly Aerospace(ファイアフライ・エアロスペース)の月着陸機「Blue Ghost(ブルーゴースト)」が月面への軟着陸に成功しています。Athenaが着陸に成功すれば、数日間で2機の民間月着陸機が相次いで月面に降り立つことになります。

Athenaとは

AthenaはIntuitive Machinesが開発した「Nova-C(ノバC)」クラスの月着陸機のひとつです。同社によると、Nova-Cは全高4.73m・重量2120kgで、最大130kgのペイロードを搭載して月面に着陸することができます。

同クラス最初の機体「Odysseus」による「IM-1」ミッションは1年前の2024年2月に打ち上げが行われ、Odysseusは月の南極近くにあるマラパートA・クレーター(Malapert A、直径約33km)に横転しながらも軟着陸することに成功しました。

アメリカの民間企業Intuitive Machinesの月着陸機「Athena」(Credit: Intuitive Machines)
【▲ アメリカの民間企業Intuitive Machinesの月着陸機「Athena」(Credit: Intuitive Machines)】

IM-2はIntuitive Machinesにとって2回目の月着陸ミッションで、月の南極から160kmほど離れたMons Mouton(モンス・ムートン、ムートン山)と呼ばれる地域に設定された目標地点へ着陸する予定です。機体にはNASAの「PRIME-1(Polar Resources Ice Mining Experiment-1)」ミッションのドリルと質量分析計が搭載されており、着陸地点直下のサンプルを採取して分析が行われます。

Athenaには月面に展開される複数の小型機や探査車も搭載されています。Intuitive Machinesの「Grace」はヒドラジンスラスターの推力を利用して月面を跳躍(ホッピング)するように飛行しながら移動できる小型機で、最大10kgのペイロードを搭載して最大25km移動することが可能とされており、Athenaの着陸後に月面へ展開されます。

この他にもアメリカの民間企業Lunar Outpost(ルナー・アウトポスト)の小型探査車「MAPP(Mobile Autonomous Prospecting Platform)」、日本の民間企業ダイモンの小型探査車「YAOKI(ヤオキ)」が搭載されており、展開後に着陸地点周辺の月面でそれぞれの活動が行われる予定です。

また、IM-2ミッションでは月面向け通信システム「LSCS(Lunar Surface Communication System)」のテストも行われます。フィンランドの通信機器大手Nokia(ノキア)の傘下にあるベル研究所が開発したLSCSは月面で4G/LTEネットワークを提供する通信システムで、IM-2ではAthenaが基地局の役割を担い、GraceやMAPPとの間で通信が行われる予定です。

【▲ NASAの「PRIME-1」ミッションの解説動画(英語)】
(Credit: NASA)

月面を跳躍移動するIntuitive Machinesの小型機「Grace」の想像図(Credit: Intuitive Machines)
【▲ 月面を跳躍移動するIntuitive Machinesの小型機「Grace」の想像図(Credit: Intuitive Machines)】
Nokiaの月面向け4G/LTEネットワークの通信機器を搭載した月着陸機「Athena」(中央)と小型探査車「MAPP」(左)の想像図(Credit: Nokia Bell Labs)
【▲ Nokiaの月面向け4G/LTEネットワークの通信機器を搭載した月着陸機「Athena」(中央)と小型探査車「MAPP」(左)の想像図(Credit: Nokia Bell Labs)】
Intuitive Machinesの月着陸機「Athena」(左)とダイモンの小型探査車「YAOKI」(右)の想像図(Credit: Intuitive Machines)
【▲ Intuitive Machinesの月着陸機「Athena」(左)とダイモンの小型探査車「YAOKI」(右)の想像図(Credit: Intuitive Machines)】

 

文・編集/sorae編集部

参考文献・出典