ボーイング新型宇宙船「スターライナー」無人で帰還へ クルーは別の宇宙船で帰還予定
【▲ SpaceXのCrew Dragon(クルードラゴン)宇宙船の窓越しに撮影されたBoeingのStarliner(スターライナー)宇宙船。2024年7月3日撮影(Credit: NASA)】

アメリカ航空宇宙局()はアメリカ東部夏時間2024年8月24日13時に記者会見を開き、Boeing(ボーイング)の新型宇宙船「Starliner(スターライナー)」による飛行ミッション「Crew Flight Test(CFT)」の一環として国際宇宙ステーション(ISS)に滞在しているの宇宙飛行士2名について、Starlinerではに帰還させないことを決定したと発表しました。

StarlinerはSpaceX(スペースX)の宇宙船「Crew Dragon(クルードラゴン)」とともにのCommercial Crew Program(コマーシャルクループログラム、商業乗員輸送計画)のもとで開発がスタートした船です。これまでに2回の無人飛行試験が実施されており、今回のCFTミッションは開発の最終段階となる有人飛行試験の位置付けです。

アメリカ・フロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地から日本時間2024年6月5日に打ち上げられたStarlinerは、日本時間同年6月7日にISSへドッキングすることに成功。Starlinerに搭乗していたのBarry Wilmore宇宙飛行士とSunita Williams宇宙飛行士はISSに滞在している第71次長期滞在クルー7名との合流を果たしました。

【▲ SpaceXのCrew Dragon(クルードラゴン)宇宙船の窓越しに撮影されたBoeingのStarliner(スターライナー)宇宙船。2024年7月3日撮影(Credit: NASA)】
【▲ SpaceXのCrew Dragon(クルードラゴン)宇宙船の窓越しに撮影されたBoeingのStarliner(スターライナー)宇宙船。2024年7月3日撮影(Credit: NASA)】

当初の予定ではCFTの2名のクルーはISSに8~10日間滞在する予定でしたが、打ち上げからISS到着までの間にStarlinerのサービスモジュールに組み込まれている姿勢制御システム(RCS)で打ち上げ前にも確認されていたヘリウム漏れや一部のスラスターが使用できない問題が発生。CFTの帰還予定日は未定のまま延期され、宇宙と地上でのテストやデータの収集と評価、帰還時の緊急時対応計画策定といった作業が続けられていました。

その結果として、NASAは飛行の安全性と性能要件が満たされていないと判断し、CFTのStarlinerをクルーが搭乗しない無人の状態でへ帰還させる決断を下しました。Starlinerの帰還は2024年9月上旬の予定です。NASA宇宙運用ミッション総局(Space Operations Mission Directorate)のKen Bowersox副局長はプレスリリースを通じて「このような決定は決して容易なことではないが、NASAとBoeingのチームが徹底的な分析と透明性のある議論を行い、CFTミッション中の安全にフォーカスしたことを称賛したい」とコメントしています。

【▲ 国際宇宙ステーション(ISS)で機器の準備作業を行うアメリカ航空宇宙局(NASA)のBarry Wilmore宇宙飛行士(右)とSunita Williams宇宙飛行士(左)。2024年6月27日撮影(Credit: NASA)】
【▲ 国際宇宙ステーション(ISS)で機器の準備作業を行うアメリカ航空宇宙局(NASA)のBarry Wilmore宇宙飛行士(右)とSunita Williams宇宙飛行士(左)。2024年6月27日撮影(Credit: NASA)】

また、StarlinerでISSに渡ったWilmore宇宙飛行士とWilliams宇宙飛行士は第71次/第72次長期滞在クルーの正式な一員として2025年2月まで滞在し、SpaceX(スペースX)の宇宙船「Crew Dragon(クルードラゴン)」によるNASAの有人宇宙飛行ミッション「Crew-9」で帰還することも発表されました。

2024年9月24日以降に打ち上げ予定のCrew-9にはもともとNASAのZena Cardman宇宙飛行士、Nick Hague宇宙飛行士、Stephanie Wilson宇宙飛行士、ロスコスモス(Roscosmos)のAlexander Gorbunov宇宙飛行士が割り当てられていましたが、少なくとも2名はWilmore宇宙飛行士およびWilliams宇宙飛行士と入れ替わることになります。変更後のメンバーは後日発表される予定です。NASAとSpaceXはWilmore宇宙飛行士とWilliams宇宙飛行士のための追加の物資やCrew Dragon用のの準備などを進めているということです。

会見の席上、スペースシャトル「Challenger(チャレンジャー)」や「Columbia(コロンビア)」の事故が決断にどう影響したのかを記者から質問されたNASAのBill Nelson長官は、影響は非常に大きく、すべての人々の決断に影響したと回答。自身もColumbiaで宇宙飛行(※)を行った経験があるNelson長官は、NASAは不十分な情報伝達がもたらした2つの事故以来、勇気を持って進んで意見を述べられる雰囲気作りに懸命に努力しており、今回はその良い例だと思うともコメントしています。【最終更新:2024年8月25日11時台】

※…1986年1月のSTS-61Cで6日間飛行。Challengerの事故が起きた同月のSTS-51Lの前に行われた最後のミッションだった。

 

Source

  • NASA - NASA Decides to Bring Starliner Spacecraft Back to Earth Without Crew
  • NASA - NASA's Boeing Crew Flight Test Status News Conference (YouTube)

文・編集/sorae編集部