株式会社アストロスケールは2024年4月26日、同社の商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J(アドラスジェイ)」で撮影した観測対象のデブリの画像を公開しました。同社によると、スペースデブリ(宇宙ごみ)に接近して近距離で撮影した画像が公開されるのは世界初となります。【最終更新:2024年4月29日10時台】
こちらが公開された画像です。写っているのは2009年1月に温室効果ガス観測技術衛星「いぶき(GOSAT)」を打ち上げた「H-IIA」ロケット15号機の上段(2段目、全長約11m・直径約4m・重量約3トン)で、打ち上げ後は大型デブリとなって地球を周回し続けています。
ADRAS-Jはデブリ除去の新規宇宙事業化を目的としたJAXAの取り組みである「商業デブリ除去実証(CRD2)」の実証衛星です。CRD2は大型デブリへの接近・近傍制御と情報取得を実証するフェーズIと、大型デブリの除去を実証するフェーズIIの2段階に分かれています。ADRAS-Jは2022年3月にフェーズIの契約相手方として選定されたアストロスケールが開発と運用を担っており、日本時間2024年2月18日夜にRocket Lab(ロケットラボ)の「Electron(エレクトロン)」ロケットで打ち上げられました。
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軌道に投入されたADRAS-Jは2024年2月22日に前述の大型デブリへの接近を開始し、GPSや地上からの観測値をもとに後方数百kmまで接近。4月9日からはADRAS-J自身に搭載されているセンサーやカメラを利用した相対航法を開始し、4月17日には後方数百mまで接近することに成功しました。冒頭の画像はその距離から撮影されたものです。
JAXAによると、対象のデブリは重力傾斜トルク(※)によって長軸が地球の中心を向いた直立姿勢になっている(言い換えれば地球の表面に対して直立するような姿勢になっている)ことがこの画像から確認されました。また、打ち上げ時にオレンジ色をしていた断熱材は軌道上で10年以上にわたり強い紫外線を浴び続けた結果、劣化して濃い茶色に変色していることも確認されています。こうした姿勢の状態や表面材料の劣化は事前に予測されており、デブリの観測や捕獲に影響することから、実際に得られた情報は今後に向けた重要な知見となります。
※…軌道上の細長い物体の各部分に働く重力の差によって生じる、物体の長軸を天体の中心方向へ向けるように作用するトルクのこと。
アストロスケールは引き続きADRAS-Jの運用を継続し、対象のデブリへさらに接近して観測を行う予定です。なお、アストロスケールは大型デブリの捕獲を実証するCRD2のフェーズII契約相手方にも選定されたことを2024年4月25日に発表しており、捕獲用のロボットアームを搭載する実証衛星「ADRAS-J2」の開発を進めていくということです。
Source
- JAXA - 商業デブリ除去実証フェーズI における軌道上のスペースデブリ画像を公開
- アストロスケール - アストロスケール、ランデブーおよび近接運用を通じて撮影された世界初の宇宙ごみ画像を公開 -アストロスケール
- アストロスケール - アストロスケールジャパン、JAXAの商業デブリ除去実証プログラムのフェーズIIに選定
文・編集/sorae編集部