「祝融」地表へ。中国の火星探査車が着陸機から降りて走行を開始する
中国の火星探査車「祝融」の障害物回避カメラによって撮影された画像。着陸機のスロープから続く走行痕が見えている(Credit: CNSA)
【▲ 中国の火星探査車「祝融」の障害物回避カメラによって撮影された画像。着陸機のスロープから続く走行痕が見えている(Credit: CNSA)】

中国国家航天局(CNSA)は5月22日、火星探査車「祝融(しゅくゆう)」が着陸機から降りることに成功し、地表での探査活動を開始したと発表しました。

CNSAによると、祝融は日本時間5月22日11時40分に着陸機を降りて地表に進みました。発表では祝融の後部障害物回避カメラによって撮影された冒頭のモノクロ画像が公開されていて、スロープを下ろした着陸機と、祝融の車輪へと続く走行痕が写っています。

祝融は火星探査機「天問1号」の探査車(ローバー)として、宇宙から火星を観測する周回機、祝融を火星の地表へと降ろす着陸機とともに2020年7月23日に打ち上げられました。天問1号は2021年2月10日に火星の周回軌道へと入り、祝融を載せた着陸機は日本時間5月15日8時18分に火星北半球のユートピア平原へ着陸。5月19日には祝融によって撮影された初の画像が公開されていました。

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モニターに写し出された火星探査車「祝融」と着陸機のシミュレーション映像。北京航天飛行制御センターにて5月22日に撮影(Credit: Xinhua/Jin Liwang)
【▲ モニターに写し出された火星探査車「祝融」と着陸機のシミュレーション映像。北京航天飛行制御センターにて5月22日に撮影(Credit: Xinhua/Jin Liwang)】

祝融は高さ1.85m、重量250kgの探査車で、6つの車輪と4枚の太陽電池パネルを備えており、火星の地表を時速200mで移動可能とされています。2台の地形カメラをはじめ、マルチスペクトルカメラ、気象モニター、地中レーダー、磁場検出器、レーザーを用いた表面組成検出器といった観測装置を搭載した祝融は、少なくとも約3か月間、90ソル(1ソル=火星の1太陽日、約24時間40分)の稼働が想定されています。祝融という名前は中国の古代神話における火の神に由来します。

なお、火星探査において最初に運用が成功した探査車は、1997年7月に着陸したアメリカ航空宇宙局(NASA)の火星探査機「マーズ・パスファインダー」に搭載されていた小型ローバー「ソジャーナ」です。ソジャーナは全長65cm、幅48cm、重量11.5kgという小さな探査車でしたが、その後に続くNASAの探査車と同じ6つの車輪を備えていて、岩石の組成を分析するための分光計も搭載されていました。

火星の地表に降りたNASAの小型ローバー「ソジャーナ」(Credit: NASA/JPL)
【▲ 火星の地表に降りたNASAの小型ローバー「ソジャーナ」(Credit: NASA/JPL)】

2004年1月にはNASAの2台の探査車「スピリット」「オポチュニティ」が火星に着陸して探査を開始し、スピリットは2010年に、オポチュニティは2018年に通信が途絶するまで探査活動を行いました。2012年8月には現在もミッションを継続しているNASAの「キュリオシティ」が、今年2021年2月にはNASA最新の探査車「Perseverance(パーセベランス、パーサヴィアランス)」が着陸に成功しています。

また、2022年9月には欧露共同の火星探査ミッション「エクソマーズ2022」の打ち上げが予定されています。エクソマーズ2022における探査機はロシアの地表プラットフォーム「カザチョク」と欧州宇宙機関(ESA)の探査車「ロザリンド・フランクリン」から構成されており、予定通りなら2023年にも新たな探査車が火星に降り立つことになります。

エクソマーズ2022の探査車「ロザリンド・フランクリン」(手前)と地表プラットフォーム「カザチョク」(左奥)を描いた想像図(Credit: ESA/ATG medialab)
【▲ エクソマーズ2022の探査車「ロザリンド・フランクリン」(手前)と地表プラットフォーム「カザチョク」(左奥)を描いた想像図(Credit: ESA/ATG medialab)】

 

Image Credit: CNSA
Source: CNSA / 新華社通信
文/松村武宏