火星探査車「祝融」を載せた着陸機のシミュレーション映像(Credit: Xinhua/Jin Liwang)

【▲ 火星探査車「祝融」を載せた着陸機のシミュレーション映像(Credit: Xinhua/Jin Liwang)】

中国国家航天局(CNSA)は5月15日、火星探査機「天問1号」から切り離された着陸機が火星の地表へ着陸することに成功したと発表しました。火星への着陸成功は中国にとって初めてのことで、世界的にも旧ソ連、アメリカに次ぐ3か国目となります。

天問1号は周回機(オービター)、着陸機(ランダー)、探査車(ローバー)から構成される探査機です。このうち探査車は中国の古代神話における火の神にちなんで「祝融(しゅくゆう)」と命名されています。2020年7月23日に海南島の文昌衛星発射センターから打ち上げられた天問1号は、2021年2月10日火星の周回軌道へ入ることに成功していました。

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火星探査機「天問1号」が撮影した火星(Credit: CNSA)

【▲ 火星探査機「天問1号」が撮影した火星(Credit: CNSA)】

CNSAによると、天問1号は日本時間15日2時頃にエンジンを点火して火星に接近する軌道へと入り、5時頃に着陸機を分離した後に元の軌道へと戻りました。探査車「祝融」を載せた着陸機は火星への降下を続け、分離から3時間後に大気圏へ突入。日本時間2021年5月15日8時18分にユートピア平原の北緯25.1度、東経109.9度の地点に着陸しました。新華社通信によると、着陸機を降りる前の祝融は、7~8日かけて周辺環境の確認と自己診断を行うとされています。

地球との通信にはタイムラグが生じることから、3か月前に着陸したアメリカ航空宇宙局(NASA)の火星探査車「Perseverance(パーセベランス、パーサヴィアランス)」と同様に、着陸機は自律的な判断で降下する必要がありました。パラシュートによる減速の後に高度1500メートルでロケットエンジンを点火した着陸機は、高度100メートル付近で一旦ホバリングを行い、障害物がないことを確認した上で着陸地点に降り立ったということです。

2016年8月にCNSAから公開された探査車と着陸機のコンセプト(Credit: Xinhua)

【▲ 2016年8月にCNSAから公開された探査車と着陸機のコンセプト(Credit: Xinhua)】

祝融は高さ1.85メートル、重量250キログラムで、6つの車輪と4枚の太陽電池パネルを備えており、火星の地表を時速200メートルで移動可能とされています。祝融にはナビゲーション用の2台のカメラをはじめ、マルチスペクトルカメラ気象センサー地中レーダー磁力計レーザーを用いた表面組成の検出器といった観測装置が搭載されています。

火星の北半球に広がるユートピア平原は、数十億年前の天体衝突によって形成された衝突盆地と考えられています。CNSAでは探査機の着陸地点にユートピア平原を選んだ理由として、地形や天候が着陸に適していることと、かつて海の一部だった可能性が高いことに言及。祝融はここで少なくとも3か月間の探査を行う予定です。

天問1号チーフデザイナーの張栄橋氏(左)(Credit: Xinhua/Rao Aimin)

【▲ 天問1号チーフデザイナーの張栄橋氏(左)(Credit: Xinhua/Rao Aimin)】

なお、CNSAによると、天問1号のチーフデザイナーを務める張栄橋氏は15日、火星で採取したサンプルを持ち帰るサンプルリターンミッションの計画立案を中国が開始したと発言しています。火星からのサンプルリターンミッションはNASAと欧州宇宙機関(ESA)も共同で進めており、Perseveranceが採取・保管したサンプルを回収し、地球に運ぶことが計画されています。

地球では火星に由来する隕石も幾つか見つかっていて、研究に役立てられていますが、探査機によって火星で採取されたサンプルが地球に持ち帰られたことはまだありません。今後の火星探査では、米欧と中国によるサンプルリターンミッションが一つの焦点になりそうです。

 

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Image Credit: CNSA
Source: CNSA / 新華社
文/松村武宏

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