
(引用元:ESA/Hubble)
今回紹介するのは、ハッブル宇宙望遠鏡が2016年5月16日に撮影した海王星の一部を拡大した画像です。中央に写っているのは、当時、海王星の南半球に出現していた暗斑「SDS-2015」です。「暗斑」は画像上で周囲より暗く見える領域を指す呼び方で、「ダークボルテックス(dark vortex=暗い渦)」は、その暗斑が巨大な渦であることを示す表現です。

海王星の暗斑は、青い波長で特に暗く見える巨大な高気圧性の渦です。1989年にNASAの探査機「ボイジャー2号」が海王星に接近した際、地球に匹敵するサイズの「大暗斑(GDS-89)」が初めて観測されました。しかし1994年にハッブル宇宙望遠鏡が撮影した時にはすでに消滅しており、木星の大赤斑が数百年存在し続けているのとは対照的に、海王星の暗斑は数年で出現と消滅を繰り返すことがあります。
今回の画像に写っているSDS-2015は、ハッブルの長期観測プログラム「OPAL」が2015年9月に南緯45度付近で発見したもので、21世紀に入って初めて海王星で確認された暗斑としても知られています。幅は約4800kmで、大西洋の幅に匹敵する規模と考えられています。

画像で暗斑の部分がやや赤みを帯びて見えるのは、大気の構造を分かりやすく際立たせるために、複数の波長で取得されたデータを合成している疑似カラー画像となっているためです。
人間の目には海王星全体がのっぺりとした淡い青色に見え、暗斑も「わずかに暗い青」としてしか認識できません。しかし、暗斑の奥深くにあるエアロゾル層には、青い光を吸収する性質があります。そのため、ハッブル宇宙望遠鏡が観測した複数の波長データを合成してコントラストを強く引き上げると、青い光が吸収されて弱まった分だけ赤や黄色の成分が相対的に強調され、結果としてこのような色合いで可視化されるのです。
この渦の上空には、周囲の大気が高気圧に沿って押し上げられることで生じた、メタンの氷の結晶からなる白い伴雲が浮かんでいます。
このSDS-2015はその後縮小し、2017年には小さく薄れた姿が記録されています。その後も2018年に北半球で新たな暗斑が発見されるなど、暗斑の出現と消滅が続いています。
海王星の暗斑がなぜ発生し、どのように移動し、やがて消えていくのか。その詳しいメカニズムは現在も研究対象となっています。

編集/sorae編集部
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参考文献・出典
- NASA Science - Hubble Imagery Confirms New Dark Spot on Neptune
- ESA/Hubble - Neptune (full colour)
- STScI / MAST - Neptune's Dark Vortex SDS-2015
- NASA HubbleSite - Hubble Sees Neptune’s Mysterious Shrinking Storm
























