広告
広告

太陽は、太陽系のいわば主役であり、その総質量の99.86%を占めています。

われわれに最も身近なこの恒星が放出する光と熱は圧倒的です。地球から約1億5000万kmも離れていながら、太陽は直視できないほどの強い光で、地球とその生物圏を照らし出しています。

太陽の温度は?

アメリカの太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」は2024年、太陽まで約610万kmの距離に接近し、その希薄な“大気”(コロナ)を突っ切りました。通過時の速度は秒速約190km(時速約69万km)、人類が達成した最高の速度でした。

探査機がこれほどの高速で飛行したのは、太陽の熱にさらされる時間をできるかぎり短縮するためでした。太陽の表面は約5500℃(※1)(約5800K:Kは絶対温度の単位、0K=約-273℃)と、あらゆる金属を融かすほどの高温だからです。

金属で融点が最も高いタングステンは約3400℃で融け、現時点では物質で最高温の融点をもつタンタルハフニウムカーバイド合金でさえ約3990℃で融解します(2026年8月時点)。

しかも、太陽のコロナは太陽表面よりもはるかに高温であり、その温度は数十万~数百万℃にも達します。コロナ自体は希薄とはいえ、その内部に飛び込むことは探査機にとっては大きな挑戦でした。

コロナがなぜこれほど温度が高いのかは、いまのところ十分には理解されていませんが(※2)、この探査機が解明の糸口をつかむかもしれません。

図1:太陽は、電波からX線まで広範な波長の電磁波を放出しています。その中心となる波長は可視光のオレンジから青の領域であり、太陽の表面温度5500℃(5800K)を反映しています。映像は、NASAの太陽観測衛星「ソーラー・ダイナミクス・オブザーベトリー(SDO)」と宇宙望遠鏡「NuSTAR」、それにJAXAの「ひので」がとらえた極短紫外線(赤、黄)およびX線(緑、青)のデータにもとづく太陽の姿。(Credit: NASA/JPL-Caltech/GSFC/JAXA)
【▲ 図1:太陽は、電波からX線まで広範な波長の電磁波を放出しています。その中心となる波長は可視光のオレンジから青の領域であり、太陽の表面温度5500℃(5800K)を反映しています。映像は、NASAの太陽観測衛星「ソーラー・ダイナミクス・オブザーベトリー(SDO)」と宇宙望遠鏡「NuSTAR」、それにJAXAの「ひので」がとらえた極短紫外線(赤、黄)およびX線(緑、青)のデータにもとづく太陽の姿。(Credit: NASA/JPL-Caltech/GSFC/JAXA)】
図2:太陽のコロナに突入する太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」のイメージ図。2018年に打ち上げられたこの探査機は、1400℃までの熱に耐える設計です。2024年12月には数十万℃以上という超高温のコロナを横切り、太陽から約610万kmの距離まで接近しました。その後もくり返しコロナに突入し、2026年9月には29回目の太陽フライバイを実施しています。(Credit: NASA/Johns Hopkins APL/Ben Smith)
【▲ 図2:太陽のコロナに突入する太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」のイメージ図。2018年に打ち上げられたこの探査機は、1400℃までの熱に耐える設計です。2024年12月には数十万℃以上という超高温のコロナを横切り、太陽から約610万kmの距離まで接近しました。その後もくり返しコロナに突入し、2026年9月には29回目の太陽フライバイを実施しています。(Credit: NASA/Johns Hopkins APL/Ben Smith)】

太陽の中心部の温度は?

数百万℃の太陽コロナをはるかに超えて高温なのが、太陽の中心部です。そこには太陽のエネルギー源たる“巨大核融合炉”があり、その温度は1500万℃、表面の3000倍近くにもなります。

太陽の中心は、現時点でおそらく太陽系唯一の核融合炉です。ちなみに、地上で核融合を実現するために必要な温度は、太陽中心よりもはるかに高い1億℃です。これは、地上の炉では太陽に比べるとガス密度が非常に低いため、と核融合の専門家は説明しています。

半径70万kmの太陽では、核融合の熱が中心部から表面に到達するまでに数十万年かかるとみられています。とすれば、われわれがこの瞬間に恩恵を受けている太陽光は、ホモ・サピエンスが地球上に誕生する以前に太陽中心で生じたエネルギーなのかもしれません。

太陽フレアの温度は?

短時間ながら、太陽中心部よりさらなる高温を示す現象もあります。それは「太陽フレア」です。これは太陽表面が爆発する現象であり、地球上でも通信障害やまれに都市のブラックアウト(大規模停電)を引き起こすことがあります(※3)。

フレアの温度は1000万~4000万℃とされ、最大級の爆発で放出されるエネルギーは1メガトン級水爆の10億倍、温度は1億℃に達する可能性も指摘されています。

太陽フレアは非常に巨大なエネルギーをもつため、一部の研究者は、初期の地球上で生命の材料が生み出される際に重要な役割を果たしたとみています。(了)

図3:2012年、大規模な太陽フレアが発生し、これにともなって大量の荷電粒子(CME:コロナ質量放出)が秒速1500km近くのスピードで宇宙空間に放出されました。左下にCMEと比較するために地球が描かれています。(Credit: NASA/GSFC/SDO)
【▲ 図3:2012年、大規模な太陽フレアが発生し、これにともなって大量の荷電粒子(CME:コロナ質量放出)が秒速1500km近くのスピードで宇宙空間に放出されました。左下にCMEと比較するために地球が描かれています。(Credit: NASA/GSFC/SDO)】

脚注

※1:物体は熱を電磁波として放つが、そのスペクトルは一般に熱放射に特有の形状をしている。温度が高いほど放出される電磁波の波長は短くなるため、天体も電磁波のスペクトルからそれぞれの温度を推測できる。

※2:太陽表面の磁場が強い領域ほどコロナも高温になる傾向があるため、太陽の磁力に関係するという見方が有力だが、詳細は議論の対象となっている。

※3:正確には、フレアにともなって大量の荷電粒子が放出される現象(CME:コロナ質量放出)が原因となる。こうした粒子は地球軌道上を周回する衛星の電子機器を誤作動させたり故障させたりするほか、地球の磁場を乱して磁気嵐を引き起こし、通信障害や大規模停電を発生させることもある。

 

文/新海裕美子 編集/sorae編集部

関連記事

参考文献・出典