広告
広告

ESA(ヨーロッパ宇宙機関)は2026年9月30日付で、CAS(中国科学院)との共同ミッション「Smile」の衛星による科学観測の準備が整ったことを発表し、搭載する観測装置で捉えた地球のオーロラの映像などを公開しました。

地球の磁気圏を宇宙から観測

太陽からは電気を帯びた粒子の流れである太陽風が絶えず吹き出しており、地球は自らの磁場が作る泡のような領域である磁気圏でこれを防いでいます。ESAによると、磁気圏は目に見えないことに加えて、地上の私たちはその内側から見ることになるため、磁気圏の全体を観測するのは難しいといいます。

ESAとCASの科学衛星「Smile」のCGイメージ(Credit: ESA)
【▲ ESAとCASの科学衛星「Smile」のCGイメージ(Credit: ESA)】

Smileはこの地球の磁気圏を外から観測するミッションで、観測装置として「紫外オーロラ撮像装置(UVI)」「軟X線撮像装置(SXI)」「磁力計(MAG)」「軽イオン分析器(LIA)」が搭載されています。

2026年5月19日には衛星が打ち上げられ、同年6月20日には北極上空で高度約12万1000kmまで遠ざかる細長い楕円軌道に投入することに成功していました。

UVIで捉えた北極のオーロラの映像

こちらが今回公開された映像で、UVIを使って2026年7月24日に撮影されました。半月状に写る地球で渦巻くリングのように輝いているのが、北極を取り巻くオーロラです。ESAによると、オーロラのリング全体が紫外線で観測されたのは2008年以来で、連続観測の時間も従来の最長約15時間から45時間へと長くなりました。

Smile衛星のUVI(紫外オーロラ撮像装置)で観測した地球のオーロラ(Credit: ESA & CAS/Smile/UVI)
【▲ Smile衛星のUVI(紫外オーロラ撮像装置)で観測した地球のオーロラ(Credit: ESA & CAS/Smile/UVI)】

ESAによれば、リングが波打つ様子は、磁気圏でサブストーム(オーロラ嵐)が起きたことを示しているといいます。サブストームとは、太陽風に押しつぶされた地球の磁力線が互いに近づくことで、高エネルギーの粒子が北極や南極へ一気に送り込まれる、磁気圏の短時間の乱れです。

SXIは本格観測に向けて調整中

また、こちらはSXIが試験的に観測した、大マゼラン雲(大マゼラン銀河)の超新星残骸「N132D」です。SXIは太陽風の荷電粒子が地球の超高層大気にある中性の粒子と衝突したときに放たれる軟X線(低エネルギーのX線)を捉えます。

Smile衛星のSXI(軟X線撮像装置)で観測した超新星残骸「N132D」(Credit: ESA & CAS/Smile/SXI)
【▲ Smile衛星のSXI(軟X線撮像装置)で観測した超新星残骸「N132D」(Credit: ESA & CAS/Smile/SXI)】

太陽風と磁気圏の境界である磁気圏界面の形や動きを初めて長期間にわたってX線で詳細に観測することがSXIの目的ですが、今回の発表時点では調整が続いています。地球に向けた時に迷光(不要な光)を拾いすぎてしまうのが理由で、迷光が最も弱まる2026年10月中旬には磁気圏界面もしくはカスプ(※)の鮮明なデータが初めて取得される見込みです。

※…北極や南極の上空で磁気圏に開いた「穴」のような領域のことで、太陽風の荷電粒子が地表へ向かって流れ込む場所となっている。

ESAによると、X線と紫外線をどちらも捉えるSmile衛星は、太陽風と磁気圏の相互作用によってオーロラが生じる過程を初めて同時に観測できるといいます。Smileミッションで得られたデータは、人工衛星や送電網にも影響し得る太陽活動を理解する新たな手がかりになると期待されています。

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

関連記事

参考文献・出典