こちらは、NASA(アメリカ航空宇宙局)のチャンドラX線宇宙望遠鏡などが観測した超新星残骸「いて座Aイースト(Sagittarius A East)」。いて座の方向、地球から約2万6000光年先にあります。

天の川銀河の複雑な中心部でX線を放つ超新星残骸
天の川銀河の中心には、太陽の約430万倍の質量を持つ超大質量(超巨大)ブラックホール「いて座A*(エースター)」が存在します。その近くにあるいて座Aイーストは、超新星爆発の後に残された残骸のひとつです。チャンドラを運用するCXC(チャンドラX線センター)によれば、既知の超新星残骸としてはいて座A*に最も近いものだといいます。
画像の中央やや左に広がる薄紫色の雲が、いて座Aイーストの中心部です。チャンドラが捉えた高エネルギーのX線を水色で着色したもので、残骸の中心部では紫がかって見えます。いて座A*は、そのすぐ右側に見える黄色い構造の中心に位置しています。また、右上から左下にかけてまだらに分布する緑色の部分は、チャンドラが捉えた比較的エネルギーの低いX線です。
いて座A*といて座Aイーストの双方を包むように広がる赤色の部分は、アメリカ・ニューメキシコ州のVLA(Very Large Array=超大型干渉電波望遠鏡群)が観測した電波です。左上から下端にかけて淡く見える暗い青色は、ハワイのジェームズ・クラーク・マクスウェル望遠鏡(JCMT)が観測したサブミリ波(波長0.1~1mmの電波)を示しています。

超新星残骸がブラックホールの周囲を温め続けてきた?
CXCによると、いて座A*周辺の領域でX線を放っているのはいて座Aイーストだけではありません。高温の大質量星からなる星団で恒星風どうしが衝突することで生じるX線に加えて、多数の暗いX線源が重なり合っています。
マギル大学のMayura Balakrishnan氏を筆頭とする研究チームは、1999年から2020年にかけて取得されたチャンドラの観測データを解析し、主要なX線源を分離しました。今回の画像はその成果と言えるもので、他の天体からのX線が重なり合っていないいて座Aイーストの画像が得られたのは、今回が初めてだといいます。
Balakrishnan氏らの研究では、いて座Aイーストがおよそ1万年にわたっていて座A*周辺の領域にエネルギーを注ぎ込むことで、巨大なブラックホールを取り巻くガスを高温かつ乱れた状態に保ってきたという仮説を支持する結果が得られたといいます。
CXCによれば、いて座Aイーストを明確に識別することは、星団からの恒星風が超新星残骸の進化に与えた影響を調べることにも役立ち、爆発した星の正体や、いて座A*の過去の爆発的な活動にいて座Aイーストが関わったのかどうかを明らかにする手がかりになる可能性があるといいます。
天の川銀河の中心部では、巨大なブラックホールと爆発した星の残骸が、互いに影響を及ぼし合いながら現在の姿を形づくってきたのかもしれません。
冒頭の画像はCXCから2026年9月30日付で公開されています。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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