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“暗黒銀河”の候補「CDG-2」は質量の99%がダークマター? ハッブル宇宙望遠鏡のデータから発見

突然ですが、「次の画像の中央には銀河が写っています」と言われた時、どれがそうなのかわかりますでしょうか?

とても小さく見える遠方銀河はいくつかありますが、今回の“主役”はそれとは別の、もう少し地球の近くにある銀河です。

ハッブル宇宙望遠鏡が観測した暗黒銀河の候補「CDG-2」とその周囲(Credit: Image: NASA, ESA, Dayi Li (UToronto); Image Processing: Joseph DePasquale (STScI))
【▲ ハッブル宇宙望遠鏡が観測した暗黒銀河の候補「CDG-2」とその周囲(Credit: Image: NASA, ESA, Dayi Li (UToronto); Image Processing: Joseph DePasquale (STScI))】

広大な宇宙には、無数の星々が輝く銀河がこれもまた無数に存在します。しかし、その中には光を放つ恒星が極端に少なく、実態が謎に包まれた銀河も存在するのです。

トロント大学のDavid Liさんたち研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)などの観測データから、既知の銀河の中でも非常に暗いタイプの銀河の新たな候補「CDG-2」を発見したとする研究成果を発表しました。

冒頭の画像は、まさにそのCDG-2が潜んでいる領域を捉えたものです。研究チームの成果をまとめた論文は「The Astrophysical Journal Letters」に掲載されています。

「球状星団」が見えない銀河を見つける手がかりに

研究チームによると、「ペルセウス座銀河団」の近く、地球から約2億4500万光年離れたところにあるCDG-2は、極めて淡く暗い「低表面輝度銀河」の中でも通常の星が極端に少なく、質量の大半がダークマター(暗黒物質)で構成されていると考えられる「暗黒銀河」の候補です。こうしたタイプの銀河は星がまばらにしか存在せず、通常の観測では背景の宇宙空間に溶け込んでしまうため、発見が非常に困難なことで知られています。

このような“見えない銀河”の新たな発見を目指した研究チームは、高度な統計手法を用いて、銀河の周囲に分布することが多い「球状星団」を探すアプローチを採用しました。球状星団は数万~数百万個の恒星が重力によって互いに結びつき、球状に集まっている天体で、天の川銀河では約150個が見つかっています。

この手法でハッブル宇宙望遠鏡の観測データを解析した結果、既知の低表面輝度銀河10個に加えて、暗黒銀河の候補が新たに2つ抽出されました。CDG-2はそのうちの一つであり、4つの球状星団が不自然に密集している領域として特定されています。

次に示す画像は、冒頭の画像(左側)に写っているCDG-2の範囲と、その拡大画像(右側、青丸は手がかりとなった4つの球状星団)を示したものです。研究チームによれば、このように球状星団の集団のみを手がかりとして“見えない銀河”の位置を割り出したのは、今回が初めてのケースだといいます。

ハッブル宇宙望遠鏡が観測した暗黒銀河の候補「CDG-2」の位置(左)とその拡大画像(右)。CDG-2の範囲はオレンジ色の破線、手がかりとなった4つの球状星団の位置は青色の実線で示されている(Credit: Image: NASA, ESA, Dayi Li (UToronto); Image Processing: Joseph DePasquale (STScI))
【▲ ハッブル宇宙望遠鏡が観測した暗黒銀河の候補「CDG-2」の位置(左)とその拡大画像(右)。CDG-2の範囲はオレンジ色の破線、手がかりとなった4つの球状星団の位置は青色の実線で示されている(Credit: Image: NASA, ESA, Dayi Li (UToronto); Image Processing: Joseph DePasquale (STScI))】

質量の99%以上をダークマターが占める可能性

CDG-2の存在を確実なものにするため、研究チームはESA(ヨーロッパ宇宙機関)のEuclid(ユークリッド)宇宙望遠鏡や、国立天文台ハワイ観測所のすばる望遠鏡で取得した観測データも組み合わせて詳細な解析を行いました。その結果、4つの球状星団の周囲に、銀河の存在を示す微弱な光が広がっていることが確認されました。

初期解析によれば、CDG-2が放つ光の総量は、太陽のような恒星約600万個分に相当する程度にすぎません。私たちが住む天の川銀河の恒星質量は推定で太陽の約600億倍ですから、CDG-2の規模の小ささが際立ちます。

また、研究チームは、電磁波で観測可能な通常の物質(バリオン)と、電磁波では直接観測できないダークマターを合わせたCDG-2の総質量のうち、実に99%以上がダークマターで占められていると推定しています。

新しい恒星が形成されるためには銀河に水素ガスなどの材料が必要ですが、CDG-2の場合は過去にペルセウス座銀河団に属する他の銀河と重力を介した相互作用を経験した結果、ガスが剥ぎ取られてしまった可能性が高いと研究チームは指摘しています。

銀河形成の極端なシナリオを紐解く手がかりに?

今回の発見について研究チームは、CDG-2が極端な環境下での星形成シナリオを支持する強力な証拠になり得ると述べています。

一般的な銀河では、星は緩やかに結びついた集団として形成され、徐々に分散していきます。一方、CDG-2のような銀河では、星形成の大部分が極めて密度の高い環境(球状星団)でのみ起こり、それ以外の場所ではほとんど星が形成されなかった可能性があるといいます。

CDG-2は、ダークマターの性質や、銀河がどのように形成・進化していくのかという宇宙論の根本的な謎に迫る上で、非常に重要な観測対象の一つになり得ます。今後は次世代の宇宙望遠鏡などによる、さらに詳細な観測が期待されます。

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典