【▲ ASIの小型探査機「LICIACube」が撮影したディモルフォスへのDART探査機衝突時の様子(Credit: ASI/NASA)】
【▲ ASIの小型探査機「LICIACube」が撮影したディモルフォスへのDART探査機衝突時の様子(Credit: ASI/NASA)】

既報の通り、アメリカ航空宇宙局(NASA)のミッション「DART」の探査機は日本時間2022年9月27日8時14分、小惑星「ディディモス」(65803 Didymos、直径780m)とその衛星「ディモルフォス」(Dimorphos、直径160m)からなる二重小惑星のうち、衛星であるディモルフォスへ衝突することに成功しました。

ある小惑星が地球に衝突する確率が高いと判断された場合、事前に衝突体(インパクター)を体当たりさせて小惑星の軌道を変えることで、甚大な被害をもたらす小惑星の衝突を回避できるかもしれません。DART(Double Asteroid Redirection Test、二重小惑星方向転換試験の略)は惑星防衛(プラネタリーディフェンス※)の一環として、「キネティックインパクト」(kinetic impact)と呼ばれるこの手法を初めて実証するミッションです(詳しくは以下の関連記事をご覧下さい)。

関連:「DART」探査機が小惑星への衝突に成功! NASA小惑星軌道変更ミッション

※…深刻な被害をもたらす天体衝突を事前に予測し、将来的には小惑星などの軌道を変えて災害を未然に防ぐための取り組みのこと

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【▲ ASIの小型探査機「LICIACube」が撮影したディモルフォスへのDART探査機衝突時の様子(Credit: ASI/NASA)】
【▲ ASIの小型探査機「LICIACube」が撮影したディモルフォスへのDART探査機衝突時の様子(Credit: ASI/NASA)】

歴史的なDART探査機の衝突から一夜が経ちましたが、その様子を宇宙や地上から捉えた画像が公開され始めています。イタリア宇宙機関(ASI)は9月27日、小型探査機「LICIACube」によって撮影されたDART探査機衝突時のディモルフォスの画像を公開しました。この画像はそのうちの1つで、ディモルフォスから放射状に広がっていく噴出物(イジェクタ)が捉えられています。

LICIACubeはディモルフォスへのDART探査機の衝突やその噴出物などを観測するためにASIが開発した探査機で、衝突の15日前にDART探査機から放出されていました。LICIACubeには広角カメラ「LUKE」と狭角カメラ「LEIA」の2台が搭載されていますが、この画像はLUKEで撮影された画像を処理したものです。ASIによると、撮影時のLICIACubeはディモルフォスから56.7km離れていました。

イタリア国立天体物理学研究所(INAF)のニュースレター「Media INAF」によると、LICIACubeは600枚以上の画像を撮影しました。CubeSat規格の6Uサイズ(10×20×30cm)という小さなLICIACubeには大きなアンテナが搭載されていないため、全ての画像を地球へ送信するには数週間かかる見込みです。

【▲ ハワイ大学「ATLAS」プロジェクトが撮影したDART探査機衝突の瞬間】
(Credit: ATLAS Project)

いっぽう、NASAが出資したハワイ大学のプロジェクト「ATLAS(小惑星地球衝突最終警報システム)」は、DART探査機がディモルフォスへ衝突した時の様子を地上から撮影しました。

ATLASがTwitterで公開した動画では、星空を背景に移動するディディモス/ディモルフォスの明るさが急激に増すとともに、噴出物が拡散していく様子が捉えられています(動画の再生時間は実際の時間経過よりも短縮されています)。なお、DART探査機衝突時の地球とディディモスおよびディモルフォスは約1200万km離れていたため、2つの小惑星は1つの光点として見えています。

【▲ 南アフリカで撮影されたDART探査機衝突時の様子(Credit: Gianluca Masi ( Virtual Telescope Project), Berto Monard (Klein Karoo Observatory))】
【▲ 南アフリカで撮影されたDART探査機衝突時の様子(Credit: Gianluca Masi ( Virtual Telescope Project), Berto Monard (Klein Karoo Observatory))】

DART探査機衝突時の観測は他の天文台でも行われました。イタリアの天文学者Gianluca Masiさんが管理するロボット望遠鏡のネットワーク「Virtual Telescope Project」では、アマチュア天文家のBerto Monardさんが南アフリカで衝突前後の様子を撮影することに成功しており、二重小惑星の増光と拡散する噴出物が捉えられています。また、欧州宇宙機関(ESA)が調整した6つの天文台でも衝突時のディディモス/ディモルフォスの観測が行われており、レユニオン島で撮影した画像をもとに作成された動画がESAから公開されています。

ディディモスは約2.1年周期で太陽を周回しており、衛星であるディモルフォスはその周りを11時間55分周期で公転しています。NASAによると、秒速6.1kmで衝突したDART探査機によって、ディモルフォスの公転周期は約10分短くなったと予想されています。衝突の結果は今後、地上の望遠鏡による観測を通して確認される予定です。

【▲ レユニオン島で撮影されたDART探査機衝突時の様子】
(Credit: Les Makes observatory, J. Berthier, F. Vachier / T. Santana-Ros / ESA NEOCC, D. Föhring, E. Petrescu, M. Micheli)

 

Source

  • Image Credit: ASI/NASA; ATLAS Project; Gianluca Masi ( Virtual Telescope Project), Berto Monard (Klein Karoo Observatory); Les Makes observatory, J. Berthier, F. Vachier / T. Santana-Ros / ESA NEOCC, D. Föhring, E. Petrescu, M. Micheli
  • ASI - LICIACube: conferenza stampa con le prime immagini su impatto asteroide scattate dal satellite italiano
  • Media INAF - Colpito un asteroide: storica impresa della Nasa
  • The Virtual Telescope Project 2.0 - Double Asteroid Redirection Test (DART) impacted on Didymos/Dimorphos… and it was a huge show!
  • ESA - DART asteroid impact impresses in ESA’s view from the ground

文/松村武宏

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