これまでNASAの探査機「ニュー・ホライズンズ」が撮影した画像から、冥王星に山や谷、平原、氷河など、さまざまな地形が存在し、さらには「氷の火山」まであることが明らかになっていました。今回、その「氷の火山」について、新たな知見を加える研究結果が2022年3月29日付けで発表されました。
冥王星の地形と言えばハート型の明るく輝く「トンボー地域」が有名ですが、その西側部分は「スプートニク平原」と呼ばれています。今回の画像分析の対象となったのは、その南西に位置する地域。
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この地域には、高さ1〜7キロメートル、幅30〜100キロメートルにも及ぶ大きなドーム状の地形がいくつも存在し、時にはそれらが合体してより複雑な構造を形成しています。最大の構造物の大きさ(体積)は、ハワイのマウナ・ロア火山に匹敵するとのこと。
この地域には衝突によるクレーターがほとんどなく、地質学的に若いことを示しています。このような若い地形の形成には大量の物質が必要であることから、冥王星の内部では、これまで予測されていた以上に、比較的最近まで熱(高温)を保ち、複数の発生源から水氷に富む物質が地表に噴出し、堆積した可能性があると言うのです。
また、この地形は、他の地質学的なプロセスによって形成されたとは考えにくいとのこと。例えば、この地域は地形の高低差が大きく、侵食によってできたとは考えられません。
論文の主執筆者であるKelsi Singer氏は「私たちが研究した特定の構造は、少なくともこれまでのところ、冥王星に特有のものです」と語っています。
「太陽系の新しい場所を探索することの利点の一つは、予想外の発見があることです」と語り、さらに「ニュー・ホライズンズによって観測されたこれらの巨大で奇妙に見える氷の火山は、氷の世界での火山のプロセスや地質活動に関するわれわれの知識を広げる素晴らしい例なのです」と語っています。
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Source
- Image Credit: NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Southwest Research Institute/Isaac Herrera/Kelsi Singer
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文/吉田哲郎