NASAの次世代ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡、初期宇宙の謎に挑む!
ウェッブ宇宙望遠鏡の主鏡。直径6.5mになる(Image Credit:NASA/Chris Gunn)
【▲ ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の主鏡。直径6.5mになる(Credit: NASA/Chris Gunn)】

2021年の後半に打ち上げが予定されているNASAの次世代ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(正式名称James Webb Space Telescope)はハッブル宇宙望遠鏡の後継機になります。口径6.5mの主鏡を持ち、優れた感度と空間分解能で、赤外線を観測します。ちなみに、ハッブル宇宙望遠鏡の主鏡の口径は2.4mです。

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、このような優れた性能を活かして、ファーストスターや銀河の形成、宇宙の再電離などに関する初期の宇宙の謎の解明に挑むのです!

今回はこれらのなかでも特に宇宙の再電離にフォーカスしてみたいと思います。

■宇宙の再電離とは?

ビッグバン直後、宇宙は非常に高温・高密度でした。そのため水素などの物質は原子核と電子がバラバラの状態になっていました。つまり電離していました。

光は自由電子によって散乱させられてしまうためにこのような状態では真っ直ぐに進むことができません。

しかし、宇宙が膨張を続け、温度が下がったことで原子核と電子が結合し、光は自由電子に邪魔されることなく、真っ直ぐに遠くまで進むことができるようになりました。これを宇宙の晴れ上がりといいます。ビッグバンから約38万年後のことだと考えられています。

この頃、宇宙には、まだ恒星などはなく、この後しばらく暗黒時代が続きますが、ファーストスターの登場によって、この暗黒時代も終わりをむかえます。

ファーストスターは、太陽質量の40倍ほどの質量があり、強烈な紫外線を放っていました。そのため、この強烈な紫外線によって、中性水素ガス(電離していない水素ガスのこと)が再び電離しました。これが宇宙の再電離です。ビッグバンから2~5億年ほどで始まり、ビッグバンから9億年ほどで完了したと考えられています。

この宇宙の再電離についてはまだよく解っていないことがたくさんあります。

■クエーサーを光源として銀河の間にある中性水素ガスを調べる

【▲ ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡のイメージ図(Credit: NASA)】

クエーサー(活動銀河核)は非常に明るい天体です。その明るさは、クエーサーが存在する銀河にある恒星全部の明るさを合わせたものよりも明るいです。

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が観測する初期の宇宙はとても遠く暗いです。そのためこの非常に明るいクエーサーを利用します。

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は打ち上げられるとすぐに誕生してから8億年に満たない初期の宇宙に存在した6個のクエーサーを観測します。

これらのクエーサーからの光は宇宙の再電離の時代に銀河の間にあった中性水素ガスのなかを通ってきています。そのため、その光をイメージング分光法(imaging spectroscopy)を使って、分析することで、銀河の間にある中性水素ガスの電離化の状況、そして、それがどのように進んでいったのか、など宇宙の再電離についてたくさんの情報を得ることができます。

研究チームのメンバーであるカミラ・パシフィシさんは「私達は宇宙の進化がどのように始まったのか知りたいと思っています」とコメントしています。

 

Image Credit: NASA/Chris Gunn
Source: NASA
文/飯銅重幸