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国立天文台ハワイ観測所は6月20日、東北大学などの大学国立天文台から構成された共同研究チームによる「すばる望遠鏡」を使った観測によって、天の川銀河の境界を初めて確認することに成功したと発表しました。

私たちが住む天の川銀河は、存在が確実視されている超大質量ブラックホール「いて座A*(エースター)」を中心に多数の天体が集まった中央部分の「バルジ」、バルジの周辺で渦を巻きながら平たく広がる「円盤(銀河円盤)」、バルジと円盤を取り囲むように球状に広がる「ハロー(銀河ハロー)」から構成されています。

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天の川銀河の想像図。ここに描かれているのは中央の黄色みががった「バルジ」とその周囲で渦を巻く「円盤」のみで、さらにその周りに広がる「ハロー」は描かれていません(Credit: NASA/JPL-Caltech/R. Hurt (SSC/Caltech))

天の川銀河の大きさは差し渡しおよそ10万光年とされていますが、厳密に言えばこれは円盤部の直径です。球状星団や古い星々といったハローに点在する天体を対象とした過去の研究では、32万光年程度までは観測できていたものの、口径2.5~4mという中口径の天体望遠鏡が用いられていたこともあり、境界に近くて見かけの明るさが暗い天体までは捉えきれていませんでした。

このハローの広がりを詳しく調べるため、研究チームは口径8.2mのすばる望遠鏡に取り付けられている「超広視野主焦点カメラ(HSC)」の観測データに着目。太陽よりも軽くて古く、明るさが一定な「青色水平分枝星」という恒星が分布する様子を慎重に解析しました。

その結果、天の川銀河の中心からおよそ52万光年を境に青色水平分枝星の数が急激に減り始めていることが判明。研究チームは、このあたりが天の川銀河の境界にあたる可能性が高いと判断しました。つまり、天の川銀河の真の直径は104万光年ほどということになります。ちなみに太陽系は、今回判明した天の川銀河全体の半径の20分の1、中心からおよそ2万6000光年離れた円盤部に位置しています。

今回判明した天の川銀河の中心から境界までの距離と、中心から太陽系までの距離

また、天の川銀河のハローの広がりは、銀河を包むダークマターの広がり(ダークハロー)にも匹敵することが今回の研究によってわかりました。これは、天の川銀河が他の銀河と合体を繰り返し、進化してきた歴史を理解する上でも重要な発見となります。

なお、バルジ・円盤・ハローという天の川銀河の基本構造は、他の渦巻銀河にも存在します。たとえばアンドロメダ銀河の場合、ハローの半径はおよそ53万8000光年まで広がっていることが判明していますが、アンドロメダ銀河のハローには天の川銀河のハローとは異なる特徴が多いことから、合体進化の歴史も異なるものと考えられています。

130億光年先という遠方銀河の観測、超新星爆発の大量検出など、重要な発見に貢献し続けるすばる望遠鏡。次はどんな謎を解き明かしてくれるのでしょうか。

 

Image Credit: 東北大学
https://subarutelescope.org/Pressrelease/2019/06/20/j_index.html
文/松村武宏

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