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NASAが有人月周回ミッション「アルテミスII」の3月打ち上げを見送りか ロケット2段目でトラブル

NASA(アメリカ航空宇宙局)は現地時間2026年2月21日、有人月周回ミッション「Artemis II(アルテミスII)」について、ロケットのトラブルにより2026年3月の打ち上げを見送る見通しであることを発表しました。

Artemis IIミッションは2回目のウェットドレスリハーサル(WDR: Wet Dress Rehearsal、推進剤充填を伴う打ち上げリハーサル)を終えたばかりですが、新型宇宙船「Orion(オリオン、オライオン)」を搭載した大型ロケット「SLS(Space Launch System=スペース・ローンチ・システム)」は、点検と修復のために一旦VAB(ロケット組立棟)へと戻される可能性が高くなっています。

Artemis II(アルテミスII)ミッションのSLS(スペース・ローンチ・システム)。ケネディ宇宙センター39B射点にて2026年2月10日に撮影(Credit: NASA/Aubrey Gemignani)
【▲ Artemis II(アルテミスII)ミッションのSLS(スペース・ローンチ・システム)。ケネディ宇宙センター39B射点にて2026年2月10日に撮影(Credit: NASA/Aubrey Gemignani)】

ロケット2段目のヘリウム供給に問題が発生

NASAによると、現地時間2026年2月20日から21日の夜間にかけて、SLSロケットの上段(2段目)である「ICPS(Interim Cryogenic Propulsion Stage)」で、ヘリウムの供給を適切に行えない問題が確認されました。

ヘリウムはエンジンの環境条件の維持や、極低温推進剤(液体水素・液体酸素)のタンク加圧に使われます。これまでに2回実施されたArtemis IIミッションのWDRでは2回ともヘリウムは正常に供給されていましたが、その後の通常作業中に問題が生じました。

現在、SLSのヘリウム供給はロケット側のタンクからではなく、地上側の環境制御システムを用いたバックアップ手段によって行われており、ロケットは安全な状態が保たれています。

原因究明と対策実施のためVABへロールバック

NASAのJared Isaacman長官によれば、今回の問題は2022年に実施された前回のミッション「Artemis I(アルテミスI)」でも発生した問題に似ているといいます。原因として、地上設備とロケットを繋ぐアンビリカル(接続部)にあるフィルターや、アンビリカルのインターフェイスの不具合、あるいは機体側の逆止弁(チェックバルブ)の故障などが疑われています。

これらの詳細な調査と修復は、現在SLSが設置されている射点では行うことができないため、機体を移動式発射台ごとVABへ戻す「ロールバック」の作業が必須となります。NASAは発射台周辺のアクセス用プラットフォームを取り外すなど、ロールバックに向けた準備をすでに開始したということです。

ロールバックが実施された場合、直近の目標となっていた2026年3月の打ち上げ(最短の機会は現地時間2026年3月6日)は見送られることになります。NASAのチームは引き続き原因究明と対応に全力を注いでおり、修復作業を迅速に進めることができれば、2026年4月の打ち上げ(最短の機会は現地時間2026年4月1日)を実施できる可能性があるとしています。

NASA長官はアポロ計画当時のエピソードに言及

今回の事態に際し、Isaacman長官はSNSのXに投稿したポストの中で、1969年の「Apollo 11(アポロ11号)」で人類初の月面着陸を行ったNeil Armstrong(ニール・アームストロング)宇宙飛行士(当時)のエピソードに言及しました。

Armstrong宇宙飛行士は、のちのアポロ計画に向けた技術実証ミッションのひとつ「Gemini 8(ジェミニ8号)」で自身初の宇宙飛行を経験しましたが、同ミッションはトラブルに見舞われ早期帰還を余儀なくされました。Armstrong宇宙飛行士がアポロ11号で月面に立ったのはジェミニ8号での経験から約3年後のことですが、その間には3名の宇宙飛行士が亡くなった「Apollo 1(アポロ1号)」の地上試験中の火災事故もありました。

Isaacman長官はXのポストを通じて、1960年代にも多くの挫折があったと語り、半世紀ぶりに人類が月周辺へと向かう野心的なミッションには高い壁も伴うことを強調しています。

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典