株式会社ispaceは2024年12月18日、同社の月面探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション2 “VENTURE MOON” のマイルストーンを発表しました。打ち上げは早ければ2025年1月中旬の予定で、ミッション1で果たせなかった月面軟着陸に成功するかが注目されます。
ミッション2では同社初の月スイングバイを実施
ispaceは2022年12月に月着陸船の打ち上げが行われたHAKUTO-Rミッション1で日本初・民間企業初の月面軟着陸を目指したものの、ミッションの計画段階で生じた着陸地点の変更にともなうソフトウェアの問題によって推定高度に誤差が生じ、2023年4月26日に試みられた着陸は失敗に終わりました。
- 月面着陸に至らなかった原因はソフトウェアにあり 民間月探査「HAKUTO-R」続報(2023年5月26日)
ミッション2 “VENTURE MOON” は、着陸目前まで進んだミッション1の成果をもとに、ランダーの設計・技術や月面輸送サービスのさらなる検証と強化を目的としています。着陸予定地点は月の「寒さの海(Mare Frigoris)」の中央付近です。ispaceによると、ミッション2ではミッション1で得たデータをもとにソフトウェアの改良や着陸シミュレーションの範囲拡大などを通じて、ミッションの精度の向上を図っているということです。
ミッション2の月着陸船「RESILIENCE」には顧客のペイロードの他に、ispaceが中長期的な目標に掲げるシスルナ(※)経済圏の構築で重要となる資源探査の初期的な取り組みとして、ispace EUROPEが開発した小型月面探査車(マイクロローバー)「TENACIOUS」が搭載されます。TENACIOUSは月着陸船から月面へ降ろされた後にスコップを使ってレゴリス(月の土壌)を採取する予定で、レゴリスの所有権はアメリカ航空宇宙局(NASA)の月資源商取引プログラムの下でNASAに譲渡されます。
※…cislunar:地球と月の間の空間
- ispace「HAKUTO-R」ミッション2の月着陸船は2025年1月に打ち上げへ(2024年11月13日)
- ispace EUROPEが小型月面探査車を公開 ispaceの2回目のミッションで月へ(2024年7月29日)
今回発表されたミッション2のマイルストーンは、打ち上げ準備の完了にあたる「Success 1」から月面着陸後の安定状態確立にあたる「Success 10」まで10段階に分かれていて、ispaceは各段階のクライテリア達成を目指すことになります。
ミッション2のマイルストーンの内容はミッション1と概ね同じですが、5段階目の「Success 5」として、ispaceは同社初の月フライバイを試みます。ミッション1で達成されたのは「Success 8」までだったため、ミッション2では月面着陸の完了にあたる「Success 9」とその次のSuccess 10を達成できるかが注目されます。
なお、ミッション2はミッション1に引き続き低エネルギー遷移軌道(※)を飛行するため、月フライバイは打ち上げ約1か月後、月面着陸は打ち上げから4~5か月後に実施される予定です。
※…low-energy transfer orbit。飛行するのに時間はかかるものの、少ない推進剤で月へ向かうことができるタイプの軌道。
また、ispaceの月着陸船RESILIENCEはアメリカの民間企業SpaceX(スペースX)の「Falcon 9(ファルコン9)」ロケットで打ち上げられますが、同じロケットにはアメリカの民間企業Firefly Aerospace(ファイアフライ・エアロスペース)の月着陸船「Blue Ghost」も一緒に搭載されることが発表されています。
HAKUTO-Rミッション2の月着陸船に搭載されるペイロード
- 高砂熱学工業株式会社の月面用水電解装置
- 株式会社ユーグレナの自己完結型食料生産モジュール
- 台湾・国立中央大学の深宇宙放射線プローブ
- 株式会社バンダイナムコ研究所の「GOI宇宙世紀憲章プレート」
- スウェーデンのアーティスト、ミカエル・ゲンバーグ氏の「ムーンハウスプロジェクト」
- ispace EUROPEが開発した小型月面探査車「TENACIOUS」
Source
- ispace - ispace、「HAKUTO-R」ミッション2の打ち上げは約1か月後、 最速2025年1月中旬(6日間の打ち上げウィンドウ)を予定
文・編集/sorae編集部
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