
アメリカの民間企業Intuitive Machines(インテュイティブ・マシーンズ)は日本時間2025年3月7日、同社の月着陸機「Athena」による月面への軟着陸を行いました。
Intuitive MachinesやNASA=アメリカ航空宇宙局によると、Athenaは日本時間2025年3月7日2時30分頃に月面へ到達しました。民間企業による月面着陸は5日前の日本時間2025年3月2日に危難の海へ軟着陸することに成功したFirefly Aerospace(ファイアフライ・エアロスペース)の月着陸機「Blue Ghost(ブルーゴースト)」以来で、Intuitive Machinesにとっては2024年2月以来2回目です。
着陸後の日本時間同日6時に開催された会見では、Athenaは太陽電池による発電と通信を確立しており、搭載されているペイロードのオン・オフ切り替えといった操作も可能であることが語られました。ただし、発電状態は良好ではなく、機体の姿勢が直立ではなく横転している可能性もあるといい、搭載されているカメラでの画像取得も進められている模様です。
機体の姿勢は発電状態や熱環境にも影響を与えることから、今後はNASAの月周回衛星「Lunar Reconnaissance Orbiter(LRO=ルナー・リコネサンス・オービター)」で取得する画像をもとに機体の姿勢を確認し、各ペイロードのミッションを可能な限り多く実施するために運用計画を最適化する予定だということです。【最終更新:2025年3月7日8時00分】
Athenaとは
AthenaはIntuitive Machinesが開発した「Nova-C(ノバC)」クラスの月着陸機のひとつです。同社によると、Nova-Cは全高4.73m・重量2120kgで、最大130kgのペイロードを搭載して月面に着陸することができます。
同クラス最初の機体「Odysseus」による「IM-1」ミッションは1年前の2024年2月に打ち上げが行われ、Odysseusは月の南極近くにあるマラパートA・クレーター(Malapert A、直径約33km)に横転しながらも軟着陸することに成功しました。
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IM-2はIntuitive Machinesにとって2回目の月着陸ミッションで、月の南極から160kmほど離れたMons Mouton(モンス・ムートン、ムートン山)と呼ばれる地域に設定された目標地点へ着陸する予定です。機体にはNASAの「PRIME-1(Polar Resources Ice Mining Experiment-1)」ミッションのドリルと質量分析計が搭載されており、着陸地点直下のサンプルを採取して分析が行われます。
Athenaには月面に展開される複数の小型機や探査車も搭載されています。Intuitive Machinesの「Grace」はヒドラジンスラスターの推力を利用して月面を跳躍(ホッピング)するように飛行しながら移動できる小型機で、最大10kgのペイロードを搭載して最大25km移動することが可能とされており、Athenaの着陸後に月面へ展開されます。
この他にもアメリカの民間企業Lunar Outpost(ルナー・アウトポスト)の小型探査車「MAPP(Mobile Autonomous Prospecting Platform)」、日本の民間企業ダイモンの小型探査車「YAOKI(ヤオキ)」が搭載されており、展開後に着陸地点周辺の月面でそれぞれの活動が行われる予定です。
また、IM-2ミッションでは月面向け通信システム「LSCS(Lunar Surface Communication System)」のテストも行われます。フィンランドの通信機器大手Nokia(ノキア)の傘下にあるベル研究所が開発したLSCSは月面で4G/LTEネットワークを提供する通信システムで、IM-2ではAthenaが基地局の役割を担い、GraceやMAPPとの間で通信が行われる予定です。
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【▲ NASAの「PRIME-1」ミッションの解説動画(英語)】
(Credit: NASA)



文・編集/sorae編集部
参考文献・出典
- Intuitive Machines - IM-2
- Intuitive Machines (X)