株式会社ispaceは2024年7月25日、同社のヨーロッパの子会社ispace EUROPEが開発した小型月面探査車(マイクロローバー)のフライトモデルの組み立てが完了したことを発表しました。【最終更新:2024年7月28日10時台】
こちらがispace EUROPEで開発された探査車です。日本語で「粘り強さ」を意味する「TENACIOUS」と名付けられています。ispaceによると、全長54cm・幅31.5cm・高さ26cm、重量約5kgで、軽量化を図るとともに打ち上げ時等の振動に耐える頑丈性を確保するために炭素繊維複合材料(CFRP)が駆体に使用されています。
TENACIOUSの4つの車輪はレゴリス(月の土壌)の上でも安定して走行できるように形状が工夫されていて、車体前方のHDカメラによる月面での撮影の他に、車体後方のスコップを使ってレゴリスを採取したりカメラで撮影したりすることも可能。採取されたレゴリスは2020年12月にアメリカ航空宇宙局(NASA)との間で交わされた契約の下でispace EUROPEからNASAに譲渡されるということです。
TENACIOUSはispaceの月面探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション2の月着陸船(ランダー)「RESILIENCE」のペイロードの1つとして月面に運ばれます。同社によると、RESILIENCEは2024年冬にアメリカの民間企業SpaceX(スペースX)の「Falcon 9(ファルコン9)」ロケットで打ち上げられる予定です。2024年6月にはRESILIENCEの熱真空試験が完了しており、打ち上げに向けた準備が着々と進められています。
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ispaceは2022年12月に打ち上げが行われたHAKUTO-Rミッション1の月着陸船で日本初・民間企業初の月面軟着陸を目指しましたが、2023年4月26日に試みられた着陸は失敗に終わりました。原因はミッション1の計画段階で生じた着陸地点の変更にともなうソフトウェアの問題によって、推定高度に約5kmの誤差が生じたためだと発表されています。
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アメリカや中国が有人月探査計画を推進する中、NASAの商業月輸送サービス(CLPS)の下ではIntuitive Machinesをはじめ複数の企業も月着陸ミッションを計画しており、アポロ計画から半世紀が経ったいま有人・無人の月探査ミッションが再び活発に行われようとしています。ispaceも同社の着陸船を用いた継続的なミッションの実施を予定しており、探査車によるレゴリスの採取・撮影も行われるHAKUTO-Rミッション2の成否が注目されます。
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- ispace - ispace EUROPE、欧州初&欧州発の月面探査用マイクロローバー組立完成
- ispace - ispace、「HAKUTO-R」ミッション2 RESILIENCEランダーの熱真空試験を完了
文・編集/sorae編集部