欧州の新型ロケット「アリアン6」(左)と「ヴェガC」(右)を描いたイメージ図
欧州の新型ロケット「アリアン6」(左)と「ヴェガC」(右)を描いたイメージ図(Credit: ESA - D. Ducros)

ESA(欧州宇宙機関)は10月29日、現在開発中の新型ロケット「ヴェガC」および「アリアン6」初飛行について、ヴェガCは2021年6月に、アリアン6は2022年第2四半期に実施される見通しであることを明らかにしました。

ヴェガCは現在運用されている「ヴェガ」の後継にあたるロケットです。後述するアリアン6の固体燃料ロケットブースター「P120」を1段目に用いており、高度700kmの極軌道に2.2トンの打ち上げ能力を有します。

-PR-

ESAによると、ヴェガCの初飛行はヴェガの打ち上げスケジュール遅延の影響を受けています。ヴェガは2019年7月にフライトVV15の打ち上げに失敗した後、2020年3月に予定されていたフライトVV16で復帰する計画でした。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響によりギアナ宇宙センターからの打ち上げが休止されたことと悪天候にともなう延期により、打ち上げは半年後の2020年9月に行われました。この後もヴェガによるフライトVV17(2020年11月)およびVV18(2021年2月)の打ち上げが控えているため、ヴェガCの初飛行も前述のように2021年6月までずれ込んでいます。

アリアン6は現在運用されている「アリアン5」の後継にあたるロケットです。高度500kmの太陽同期軌道への打ち上げ能力は、固体燃料ロケットブースターP120を2基備えた「A62」が6.5トン、ブースターを4基備えた「A64」が15トンとされています。開発の進捗状況や新型コロナウイルス感染症の影響などを評価した上で、初飛行は前述のように2022年第2四半期に予定されています。

ESAによると、10月7日にはヴェガCの1段目と共用するP120の3回目の地上燃焼試験に成功。アリアン6の初飛行に使われる上段ステージは現在地上試験を受けており、並行して初飛行用のコアステージの準備も進められています。また、アリアン6の発射場は2021年第3四半期にESAに引き渡される予定とされています。

新型ロケットの開発は日米でも大詰めを迎えていますが、日本の「H3」は1段目に使われるLE-9エンジンの技術的課題への対応のため、初飛行が2020年度から2021年度に延期されました。アメリカの「SLS」は新型コロナウイルス感染症の影響により、新型宇宙船「オリオン」を搭載しての初飛行が2021年11月に延期されています。いずれも今後の宇宙開発や探査を支えるロケットであるだけに、開発の成功と初飛行が期待されます。

アリアン6とヴェガCで共用されるP120の地上燃焼試験の様子(Credit: ESA/CNES/Arianespace/Optique vidéo du CSG - JM Guillon)

 

 

Image Credit: ESA
Source: ESA / アリアンスペース
文/松村武宏

-ads-

-ads-