毛糸で編み上げたような渦巻銀河 ハッブル宇宙望遠鏡が観測した「NGC 2841」

こちらは「おおぐま座(大熊座)」の方向約4600万光年先の銀河「NGC 2841」です。渦巻銀河に分類されているものの、その特徴である渦巻腕(渦状腕)は不明瞭であることから、はっきりとした渦巻腕を持たない「flocculent spiral galaxy」、日本語では「羊毛状渦巻銀河」とも呼ばれるタイプの銀河のひとつとして知られています。

ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の広視野カメラ3(WFC3)で観測された渦巻銀河「NGC 2841」(Credit: NASA, ESA, and the Hubble Heritage (STScI/AURA)-ESA/Hubble Collaboration; Acknowledgment: M. Crockett and S. Kaviraj (Oxford University, UK), R. O'Connell (University of Virginia), B. Whitmore (STScI), and the WFC3 Scientific Oversight Committee)
【▲ ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の広視野カメラ3(WFC3)で観測された渦巻銀河「NGC 2841」(Credit: NASA, ESA, and the Hubble Heritage (STScI/AURA)-ESA/Hubble Collaboration; Acknowledgment: M. Crockett and S. Kaviraj (Oxford University, UK), R. O'Connell (University of Virginia), B. Whitmore (STScI), and the WFC3 Scientific Oversight Committee)】

毛糸で編まれたようなNGC 2841は星形成活動が低調

そのふわふわとした形態の他にも、NGC 2841には注目すべき特徴があります。

渦巻銀河ではピンク色に輝く輝線星雲が渦巻腕を彩っていることがあります。輝線星雲は若い高温の大質量星が放射する紫外線によって電離した水素ガスが光を放っている「HII(エイチツー)領域」とも呼ばれる場所で、ガスと塵(ダスト)を材料に新たな星が形成される星形成領域の存在を示しています。

ところが、輝線星雲の輝きで燃え立つような印象を与える渦巻銀河がある一方で、NGC 2841には輝線星雲がほとんど見当たりません。NASA=アメリカ航空宇宙局によると、大質量星の強烈な紫外線や高速の恒星風によってガスが吹き払われてしまったためだと考えられています。そのため、NGC 2841の星形成率は比較的低い状態にあるということです。

この画像は「ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope: HST)」の「広視野カメラ3(WFC3)」で取得したデータを使って作成され、NASAが2011年2月17日付で公開したもので、2025年4月のハッブル宇宙望遠鏡打ち上げ35周年を記念して改めてNASAが紹介しています。


文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典

  • NASA - Spiral Galaxy NGC 2841