惑星状星雲「NGC 2899」
惑星状星雲「NGC 2899」(Credit: ESO)

赤と青で彩られた羽を持つ可憐な蝶のようにも見えるこちらの天体は、南天の「ほ(帆)座」の方向にある惑星状星雲「NGC 2899」です。地球から3000~6500光年の間に位置しているとされます。

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惑星状星雲は、太陽のように超新星爆発を起こさない比較的軽い恒星が赤色巨星になった頃に周囲へ放出したガスによって形成されるもので、赤色巨星を経て白色矮星に進化していく熱い中心星が放射する紫外線によって、ガスが電離することで輝いていると考えられています。上の画像では赤い色は水素青い色は酸素の分布を示しており、ガスの広がりは中心から最大で2光年に達するとみられています。

NGC 2899は左右対称な姿をしていますが、すべての惑星状星雲がこのような形をしているわけではなく、なかには整った円形をしたものもあります。ヨーロッパ南天天文台(ESO)によると、蝶の羽や鳥の翼、砂時計などにたとえられる双極性の形をした惑星状星雲は全体の1~2割ほどで、連星の相互作用がガスの流れに影響を及ぼすことで複雑な形の星雲が形成されると考えられています。

冒頭の画像は、科学観測の合間に魅力的な天体の写真を撮影・公開するESOの「Cosmic Gems(宇宙の宝石)」プログラムのもとで、ESOのパラナル天文台にある「超大型望遠鏡(VLT)」に設置されている観測装置「FORS」によって撮影され、2020年7月30日に公開されました。

NGC 2899(中央)とその周辺の様子
NGC 2899(中央)とその周辺の様子。右上の明るい星は「ほ座κ(カッパ)星」(Credit: ESO/Digitized Sky Survey 2. Acknowledgement: Davide De Martin)

 

Image Credit: ESO
Source: ESO
文/松村武宏

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