星々を盛んに生み出す混沌とした様相の渦巻銀河
渦巻銀河「NGC 1313」
渦巻銀河「NGC 1313」(Credit: ESO)

こちらの画像は南天の「レチクル座」の方向およそ2000万光年先にある渦巻銀河「NGC 1313」を写したものです。銀河の中央に見える棒状の構造からゆるく伸びている渦巻腕では星形成活動が盛んで、画像では幾つものスーパーシェル(爆発的に形成された複数の大質量星が同じような時期に超新星爆発を起こしたことで形成されたとみられる泡状の構造)が捉えられています。

一般的な渦巻銀河と比べてNGC 1313は混沌とした様相で、「Topsy Turvy Galaxy(めちゃくちゃな銀河)」と呼ばれることもあります。ヨーロッパ南天天文台(ESO)のラ・シヤ天文台での観測により、NGC 1313の回転の中心が棒状の構造の中心とは一致しないことも明らかになっています。このような混沌とした姿や活発な星形成活動は銀河どうしの相互作用によってもたらされた可能性が考えられるものの、NGC 1313は孤立して存在しており、過去に別の銀河と合体したかどうかも定かではないといいます。

NGC 1313では2006年の時点で2つの超大光度X線源(ULX:Ultraluminous X-ray Source)が確認されていて、一部の研究者からは太陽と比べて最大1000倍の質量がある中間質量ブラックホールの存在を示すものではないかと予想されています。また、「ハッブル」宇宙望遠鏡による観測では青く若いB型星の多くが星団を成さずNGC 1313全体に広く分布していることが判明し、同時期に形成された大質量星からなる星団は(銀河の年齢と比べれば)急速に消滅した可能性が示されたといいます。

画像はヨーロッパ南天天文台の「超大型望遠鏡(VLT)」によって撮影され、2006年11月23日に公開されています。

 

Image Credit: ESO
Source: ESO / Hubblesite
文/松村武宏