土星探査機カッシーニが捉えた「重なった衛星」や14億km先の「地球と月」
土星探査機カッシーニが撮影した土星(Credit: NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute)

大気のゆらぎによる影響を打ち消して天体望遠鏡の観測をサポートする「補償光学」のように、地球やその近くの宇宙空間から天体を観測・撮影する技術は目覚ましい進歩を遂げてきましたが、やはり現地に行ってみなければ見えない景色もあります。

■土星のシルエットを囲む美しいリング、はるか彼方の地球も

カッシーニが陰のなかから撮影した土星と環(Credit: NASA/JPL-Caltech/SSI)

こちらは、土星探査機「カッシーニ」によって2013年7月19日に撮影された土星の姿。カッシーニが土星の陰に入ったときに広角カメラを使って撮影した141枚の画像を合成したもので、画像の横幅は約65万kmに相当します。

太陽光が土星に遮られているため、昼の側からは観測しづらいものも含めて、幾重もの環が捉えられています。土星のシルエットに近いところで目立っているのは、環のなかでもおなじみの「メインリング」と呼ばれる部分。一番外側に見える淡くて幅が広いものは「E環」と呼ばれる環で、生命の存在が期待される衛星エンケラドゥスから噴出した水の氷でできていると考えられています。

カッシーニの狭角カメラで撮影された14億km先の地球(左)と月(右)(Credit: NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute)

実はこの画像にはいくつかの衛星をはじめ、金星地球火星も写り込んでいます。3つの惑星はどれもノイズのような点として写っていますが、狭角カメラを使って同時に撮影されたこちらの画像では、およそ14億km離れた地球と月が小さいながらもしっかりと捉えられています。

■まるで雪だるま! 絶妙なタイミングで撮影された作品

カッシーニが撮影した土星の衛星ディオネ(上)とレア(下)(Credit: NASA/JPL/Space Science Institute)

いっぽうこちらは、2010年7月27日にカッシーニの狭角カメラで撮影された衛星の姿。2つの球体がくっついた雪だるまのような形をしていますが、実際にはディオネ(上)レア(下)の2つの衛星が同時に撮影された画像です。

ディオネは直径1123km、レアは直径1528kmとサイズが異なりますが、ディオネのほうが手前に位置するタイミングだったため、ほぼ同じ大きさの球体が重なっているように見えています。奥に位置するレアはタイタンに次いで土星では2番目に大きな衛星で、直径は地球の月(直径3474km)の4割強ほどです。

■荒野のようなタイタンの地表、2034年に再び見られるかも

着陸機ホイヘンスが撮影したタイタンの地表(Credit: ESA/NASA/JPL/University of Arizona)

最後はカッシーニが搭載していた着陸機「ホイヘンス」によって撮影された、タイタンの地表の様子。カッシーニに搭載されて土星へと到着したホイヘンスは、2005年1月14日にタイタンの大気圏へと突入し、無事着陸を果たしました。手前の地表には数cmから十数cmサイズの小石もしくは氷が転がっているのがわかります。

なお、現在NASAではジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所が主導するタイタンの探査ミッション「ドラゴンフライ」の準備を進めています。ドラゴンフライではタイタンにドローンを送り込み、空を飛んで移動することで複数の地点でサンプルを採取・分析することが計画されています。打ち上げは2026年、タイタン到着は2034年が予定されており、早ければ14年後には再びタイタンの景色を目にすることができそうです。

 

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Image Credit: NASA/ESA
Source: NASA / ESA(1) / ESA(2)
文/松村武宏