おうし座の方向にある超新星残骸「かに星雲」は、可視光線(人の目に見える光)、赤外線、X線といったさまざまな電磁波でよく観測されている天体です。今回、「ハッブル」宇宙望遠鏡をはじめとしたさまざまな手段によって得られた観測データを組み合わせることで、かに星雲の複雑な立体構造が3D映像化されました。

■多波長の観測データからパルサーを取り囲む多重構造を再現

ハッブル(可視光線、黄)、スピッツァー(赤外線、赤)、チャンドラ(X線、青)による観測データをもとに再現されたかに星雲の全体像(Credit: NASA, ESA and J. DePasquale (STScI) and R. Hurt (Caltech/IPAC))

1054年におうし座で観測された超新星の残骸とされるかに星雲は、地球からおよそ6500光年離れたところにあります。中心には爆発で誕生したパルサー(かにパルサー)が存在しており、かに星雲から届く超高エネルギーガンマ線などのエネルギー源になっていると考えられています。

今回、ハッブル宇宙望遠鏡を運用する宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)によって、かに星雲の構造を視覚的に理解しやすい3D映像が制作されました。映像はハッブル宇宙望遠鏡の公式YouTubeチャンネルにて公開されています(英語の解説付き)。

映像化にはハッブル宇宙望遠鏡による可視光線(visible、黄)の画像をはじめ、「スピッツァー」宇宙望遠鏡による赤外線(infrared、赤)、およびX線観測衛星「チャンドラ」によって得られたX線(x-ray、青)の観測データが用いられています。赤外線やX線は人の目には見えないため、3D映像の色は擬似的に着色されたものとなります。

かに星雲をいろいろな波長で観測すると、星雲が持つ多重構造の各部分が見えてきます。ハッブルはイオン化した酸素が放つ光を捉えることで、かに星雲の最も外側を構成するでこぼこした殻のような構造を写し出しました。赤外線を観測するスピッツァーはその内側にある、磁力線に沿ってパルサーを取り囲む荷電粒子などの構造を描き出しています。

星雲の最も内側にあるパルサーとその周囲を取り巻く円盤、そして円盤の中心から噴出している波打つジェットは、X線を用いるチャンドラによって捉えられました。前述の動画では立体的に再現されたこれらの構造を内側から順に重ね合わせつつ、3D映像であることを活かして回転させながら示しています(動画の中盤、1分43秒あたりから)。

映像の制作を率いたFrank Summers氏(STScI)が「2次元では立体的な特徴を理解しにくい」と語るかに星雲。複雑な内部構造を持つ天体であることが、今回制作された映像では見事に再現されています。

 

Image Credit: NASA, ESA and J. DePasquale (STScI) and R. Hurt (Caltech/IPAC)
Source: NASA
文/松村武宏

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