この画像は、「葉巻銀河」の別名で知られるおおぐま座の銀河「M82」を可視光線で撮影した写真(グレースケール)に、アメリカのキットピーク国立天文台が近赤外線と中赤外線で捉えた水素ガス(赤)と、ボーイング747を改造したNASAの成層圏天文台「SOFIA」および宇宙望遠鏡「スピッツァー」が捉えた塵(黄色)を合成したもの。印象派画家の筆使いのようにも見えるものは、塵の観測によって判明したM82の磁場の流れを示しています。

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M82は、私たちが暮らす天の川銀河の10倍のペースで星が生まれている「スターバースト銀河」と呼ばれる活動的な銀河のひとつです。その活発な星形成活動は、M82の外に広がる銀河間空間に向けて銀河内のガスや塵を流出させる、強力な銀河風を伴っています。

「SOFIA」の観測チームに参加しているEnrique Lopez-Rodriguez氏が「銀河間は空っぽの空間ではありません」と述べているように、M82の銀河風によって運ばれているガスと塵の質量は、太陽5000万個から6000万個分にも上ると見積もられています。

この銀河風は銀河の磁場に対しても影響を与えると考えられてきましたが、観測による証拠はまだ得られていませんでした。今回「SOFIA」を用いた遠赤外線での観測によって、M82の磁場に沿った塵の粒子を捉えることに成功。その結果、銀河風そのものの幅に近い2000光年以上に渡り、磁場がM82の銀河円盤に対して垂直に引きずられていることがわかりました。

銀河にほど近い銀河間空間に物質や磁場を送り込むM82のようなスターバースト銀河の活動が、もしも初期の宇宙でも起きていたとすれば、同時期の銀河の進化にも影響を与えたものと思われます。今回の研究を率いたミネソタ大学名誉教授のTerry Jones氏は、「銀河系間の磁場を学ぶことは、宇宙の歴史における銀河の進化を学ぶ上での鍵です」と語っています。

 

Image credit: NASA/SOFIA/E. Lopez-Rodriguez; NASA/Spitzer/J. Moustakas et al.
https://www.nasa.gov/feature/weighing-galactic-wind-provides-clues-to-evolution-of-galaxies
文/松村武宏

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