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NASAが月面基地計画で民間3社と約6億ドルの契約締結 大型の探査車を月南極域に送る構想も

NASA(アメリカ航空宇宙局)は2026年6月30日、同局が推進する「月面基地(Moon Base)」計画についての最新情報を発表しました。

民間3社と4つの無人月面着陸ミッションを新たに契約

NASAによると、CLPS(Commercial Lunar Payload Services=商業月輸送サービス)の一環として、2028年後半に月面へ4つの新たな着陸船を送り込む民間企業として、Astrobotic(アストロボティック)、Firefly Aerospace(ファイアフライ・エアロスペース)、Intuitive Machines(インテュイティブ・マシーンズ)の3社が選定されました。

今回の契約総額は約6億ドルに上っており、内訳はAstroboticが2回のミッションで2億9790万ドル、Fireflyが1回のミッションで1億4420万ドル、Intuitive Machinesが同じく1回のミッションで1億4830万ドルとなっています。各社はすでに飛行実績のある着陸船のアップデート版を使用して、NASAの科学ペイロード(観測機器など)を月面へと輸送します。

今回契約締結が発表されたアメリカ企業3社の無人月着陸船のCGイメージ。左から:Astrobotic(アストロボティック)、Intuitive Machines(インテュイティブ・マシーンズ)、Firefly Aerospace(ファイアフライ・エアロスペース)(Credit: Astrobotic/Intuitive Machines/Firefly)
【▲ 今回契約締結が発表されたアメリカ企業3社の無人月着陸船のCGイメージ。左から:Astrobotic(アストロボティック)、Intuitive Machines(インテュイティブ・マシーンズ)、Firefly Aerospace(ファイアフライ・エアロスペース)(Credit: Astrobotic/Intuitive Machines/Firefly)】

月面基地計画の初期段階「フェーズ1」の目的とは

NASAが現在進めている月面基地計画は、宇宙飛行士の長期滞在を実現させるまでにフェーズ1からフェーズ3までの3段階にわかれています。NASAによると、初期段階におけるフェーズ1(2029年頃まで)では主に3つの目的が設定されています。

1つ目は、複数の着陸船によるミッションを繰り返すことで、将来的に高価で重要な機材や有人宇宙船を安全に降ろすための知見を蓄積する「高確率で安全に月へ到達する能力の実証」。2つ目は、月の南極など未解明な地域における「グラウンド・トゥルース(現地の直接観測データ)の取得」。そして3つ目は、将来の持続的な活動を支える電力供給やナビゲーションといった「初期インフラストラクチャー技術のテスト」です。

NASA有人宇宙飛行ミッション局長のLori Glaze氏は、「民間パートナーへの新たなミッションの委託は、月面に長期的な拠点を築くための取り組みを加速させるという私たちの決意を示すものであり、月で繁栄するために必要なスキルを開発するさらなる機会を与えてくれます」と述べています。

NASAの月面基地計画におけるフェーズ1のイメージ図。長期滞在用の居住棟はまだ存在せず、有人・無人の着陸船や非与圧型の有人探査車などが描かれている(Credit: NASA)
【▲ NASAの月面基地計画におけるフェーズ1のイメージ図。長期滞在用の居住棟はまだ存在せず、有人・無人の着陸船や非与圧型の有人探査車などが描かれている(Credit: NASA)】

将来の月面インフラ構築を見据えた3つの共通ペイロード

今回の契約で月着陸を目指す各社の着陸船には、将来のミッションの安全性を高め、月面の環境を深く理解するために、以下3つのNASA科学ペイロードが共通して搭載されます。

NASA科学ミッション局の探査担当副局長であるJoel Kearns氏は、複数の着陸船に同じ科学機器を搭載して飛行させることで、着陸時の潜在的な危険性をより深く理解できるだけでなく、あたかも地球上の複数箇所に気象観測所を設けるように、月面で環境データと位置マーカーのグローバルネットワークを構築できると述べています。

SCALPSS(Stereo Camera for Lunar Plume Surface Studies=月面プルーム研究用ステレオカメラ)

着陸船の降下時、エンジンから噴射されるプルーム(ガス)が月面のレゴリスをどのように巻き上げるかを立体的に捉えるカメラです。現状の想定では、既存の施設や機器への被害を防ぐために、着陸地点を約1.5マイル(約2.4km)離す必要があると考えられています。将来的には拠点の周辺に防護用の土手(盛土)を築く構想があり、そのための予測モデル作成に役立てられます。

LRA(Laser Retroreflector Array=レーザーリトロリフレクターアレイ)

電源を必要としない小型のレーザー反射器です。軌道上の探査機や着陸船から発射されたレーザーを同じ方向へ反射させることで、正確な位置の特定やナビゲーションを支援します。LRAをさまざまな場所に配置することで、将来の探査に向けた恒久的な位置マーカーのネットワークを構築します。

LETS(Linear Energy Transfer Spectrometer=線エネルギー付与スペクトロメーター)

月面の放射線環境を詳細に測定する装置です。宇宙飛行士を保護し、長期的な探査計画を安全に設計するために不可欠なデータを提供します。

月南極域の探査に挑む月面探査車構想「PROMISE」

また、NASAは前述の3社選定および共通搭載ペイロードの発表とあわせて、既存のハードウェアを活用して月の南極域に大型の探査車(ローバー)を送り込む構想「PROMISE(Polar Rover for Observation, Mapping, and In-Situ Exploration)」も発表しました。

NASAの発表や同局のJared Isaacman長官らによると、PROMISEは現在火星で運用されている火星探査車「Perseverance(パーシビアランス)」や「キュリオシティ(Curiosity)」のハイブリッド型エンジニアリング開発モデルとして、NASAのJPL(ジェット推進研究所)で保管されていた機体を月面探査に転用する構想です(※)

※…キュリオシティには「MAGGIE」、Perseveranceには「OPTIMISM」という実物大のエンジニアリングモデルがそれぞれ存在します。会見のライブ配信やSNSに投稿された動画で紹介されている実物の機体はOPTIMISMによく似た特徴を備えていますが、PROMISEと既存のハードウェアとのより具体的な関係性については、NASAのプレスリリースや会見では言及されていません。

月の南極域で探査を行う大型探査車「PROMISE」のCGイメージ。NASAの公式ライブ配信から引用(Credit: NASA)
【▲ 月の南極域で探査を行う大型探査車「PROMISE」のCGイメージ。NASAの公式ライブ配信から引用(Credit: NASA)】


PROMISEの最大の特徴は、キュリオシティやPerseveranceと同様に、電源としてRTG(放射性同位体熱電気転換器)を搭載する点にあります。

近年NASAが開発した月面探査車「VIPER(バイパー)」のように太陽電池を使用する場合は、2週間続く月の長い夜や、極域のクレーターの底にある永久影を探査するのが困難です。一方、RTGを搭載するPROMISEであれば、長期間の探査活動を通じて長距離を踏破し、こうした過酷な環境での資源探査も行える可能性があります。

将来の有人火星探査も見据えて

今回発表されたこれらのミッションは、月面におけるインフラストラクチャーを確立する上で極めて重要な役割を果たすことになります。

NASAは月面における持続的な滞在と、科学的・商業的な活動の拡大を目指していると述べており、月で培われた経験と基盤は、やがて人類が火星へと向かう最初の有人ミッションのための重要な礎となることが期待されています。

【▲ 月面基地計画に関する2026年6月の発表を要約した動画(英語)(Credit: NASA)】

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典