米民間企業の月着陸機「Athena」ミッション早期終了 横転状態で電力尽きる

アメリカの民間企業Intuitive Machines(インテュイティブ・マシーンズ)とNASA=アメリカ航空宇宙局は2025年3月7日付で、Intuitive Machinesの月着陸機「Athena」による月着陸ミッション「IM-2」の早期終了を発表しました。

Intuitive Machinesの月着陸機「Athena」のカメラで月面到達後に取得された画像。この後にAthenaのバッテリーが尽きてミッションは早期終了した(Credit: Intuitive Machines)
【▲ Intuitive Machinesの月着陸機「Athena」のカメラで月面到達後に取得された画像。この後にAthenaのバッテリーが尽きてミッションは早期終了した(Credit: Intuitive Machines)】

目標地点から数百m離れたクレーター内で横転を確認

既報の通りAthenaは日本時間2025年3月7日2時30分頃に月面へ到達したものの、日本時間同日6時に開催された会見の時点では太陽電池の発電状態が良好ではなく、通信は確立されているものの機体が横転している可能性もあると述べられていました。

発表によると、その後にAthenaのカメラなどで情報を収集した結果、実際の着陸地点はMons Mouton(モンス・ムートン、ムートン山)と呼ばれる地域に設定された目標地点からは250m(※)離れたクレーター内であり、機体は横転していることが確認されました。

※…Intuitive Machinesの発表から。NASAは同一のプレスリリースにて "about 820 feet" (約250m)の他にも "more than 1,300 feet (400 meters)" (約400m以上)という別の値にも言及しています。

一部のペイロードをオンにしてデータの収集が行われたものの、Athenaのバッテリーが尽きたことから、Intuitive Machinesは月面到達からおよそ13時間後の日本時間2025年3月7日15時15分(アメリカ中部標準時同日0時15分)にIM-2ミッションの早期終了を宣言しました。太陽と太陽電池パネルの向き、クレーター内の低温環境を踏まえて、Intuitive MachinesはAthenaのバッテリーが再充電されることはないと予想しているということです。

データを収集できたペイロードには、着陸地点直下から採取したサンプルの分析を目指していたNASAの「PRIME-1(Polar Resources Ice Mining Experiment-1)」ミッションのドリルと質量分析計も含まれていました。Athenaが横転したためにサンプルの採取は実現しませんでしたが、ドリルの動作実証が行われた他に、質量分析計がAthenaの推進システムに由来するとみられる元素を検出したことも確認されています。

その他のペイロードについては、月面を跳躍(ホッピング)するように飛行しながら移動する予定だったIntuitive Machinesの小型機「Grace」と、フィンランドの通信機器大手Nokia(ノキア)の傘下にあるベル研究所が開発した4G/LTEネットワークを提供する月面向け通信システム「LSCS(Lunar Surface Communication System)」で部分的に目標が達成されたことにNASAが言及しています。

一方、着陸後に展開される予定だったアメリカの民間企業Lunar Outpost(ルナー・アウトポスト)の小型探査車「MAPP(Mobile Autonomous Prospecting Platform)」と日本の民間企業ダイモンの小型探査車「YAOKI(ヤオキ)」については、今回の発表では言及されていません。

1年前にも同クラスの機体が着陸時に横転

Intuitive MachinesはAthenaと同じ「Nova-C(ノバC)」クラスの月着陸機「Odysseus」による「IM-1」ミッションを2024年2月に実施しましたが、打ち上げ前にオンにされるべきだったレーザー距離計のスイッチがオフのままだったために高度の計測データを使用できず、計画よりも高速で月面に接地した結果として、この時も機体は横転しています。

今回のIM-2ミッションではAthenaのレーザー距離計は稼働していましたが、着陸後の会見では想定よりもノイズが多かったことが言及されており、横転の原因となった可能性があります。

なお、Intuitive MachinesはNASAの商業月輸送サービス(CLPS)の下でさらに2つのミッションも契約しており、2026年に「IM-3」ミッション、2027年に「IM-4」ミッションが実施される予定です。

 

文・編集/sorae編集部

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参考文献・出典