「ファルコン9」ロケット2段目で異常発生 スターリンク衛星を予定通りの軌道に投入できず
【▲ 日本時間2024年7月12日の打ち上げでSpaceXのドローン船に着陸した「Falcon 9」ロケット1段目機体。SpaceXの公式Xアカウントより(Credit: SpaceX)】

アメリカの民間宇宙企業SpaceXは2024年7月12日(日本時間・以下同様)、同日に打ち上げられた「Falcon 9(ファルコン9)」ロケットの2段目で異常が発生し、搭載されていた衛星を予定通りの軌道に投入できなかったことを明らかにしました。【最終更新:2024年7月12日16時台】

SpaceXや同社のElon Musk(イーロン・マスク)CEOによると、同社の衛星通信サービス「Starlink(スターリンク)」の通信衛星20機(Group 9-3、うち13機はDirect to Cell対応)を搭載したFalcon 9ロケットが、2024年7月12日11時35分にアメリカ・カリフォルニア州のヴァンデンバーグ宇宙軍基地から打ち上げられました。1段目は発射8分後頃にドローン船へのランディングに成功し、続いて2段目は発射8分40秒後頃に第1回エンジン燃焼を完了しています。

【▲ 日本時間2024年7月12日の打ち上げでSpaceXのドローン船に着陸した「Falcon 9」ロケット1段目機体。SpaceXの公式Xアカウントより(Credit: SpaceX)】
【▲ 日本時間2024年7月12日の打ち上げでSpaceXのドローン船に着陸した「Falcon 9」ロケット1段目機体。SpaceXの公式Xアカウントより(Credit: SpaceX)】

しかし、2段目の近地点高度を上昇させるための第2回エンジン燃焼時に、何らかの理由で「an engine RUD(エンジンのRUD)」が発生しました(Musk氏のXでのポストより)。RUDとは「Rapid Unscheduled(またはUnplanned) Disassembly」、直訳すれば「予定外の急速な分解」の略で、爆発や飛行中断措置によって機体が分解したことを示す際などに用いられる言葉です。RUDが発生した結果、2段目の第2回エンジン燃焼は正常に完了せず、搭載されていたStarlink衛星は予定よりも低い軌道に投入されました。

SpaceXやMusk氏によると、同日14時37分の時点では投入されたStarlink衛星のうち少なくとも5機とは通信が行われており、大気の抵抗によって高度が下がる前に搭載されているイオンエンジンを使って高度を上昇させることが試みられています。Musk氏は「おそらくうまくいかないが、試す価値はある」とXにポストしています。

【▲ 参考画像:トルコの通信衛星「Türksat 6A」を搭載して日本時間2024年7月9日に打ち上げられた「Falcon 9」ロケット。SpaceXの公式Xアカウントより(Credit: SpaceX)】
【▲ 参考画像:トルコの通信衛星「Türksat 6A」を搭載して日本時間2024年7月9日に打ち上げられた「Falcon 9」ロケット。SpaceXの公式Xアカウントより(Credit: SpaceX)】

SpaceXが運用するFalcon 9は有人宇宙船「Crew Dragon(クルードラゴン)」の打ち上げを含む様々なミッションで使用されており、頻繁に打ち上げが行われています。派生型の「Falcon Heavy(ファルコン・ヘビー)」ロケットも含めると2023年の1年間では96回打ち上げられており、2024年は今回の打ち上げが70回目でした。飛行中に大きなトラブルが起きたのは2015年6月の「Dragon(ドラゴン)」補給船運用7号機の打ち上げ失敗以来、打ち上げ前のトラブルも含めれば2016年9月の通信衛星「AMOS-6」喪失以来です(1段目機体のランディング失敗は除く)。

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今回のFalcon 9ロケット2段目エンジンで発生した異常の原因は今のところわかっておらず、原因の究明と対策が完了するまでは有人宇宙飛行ミッションを含む打ち上げスケジュールに影響が及ぶ可能性も考えられます。

 

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文・編集/sorae編集部