約35光年先の赤色矮星で5番目の惑星を発見 ハビタブルゾーン内を公転

とびうお座の方向・約35光年先の赤色矮星「L 98-59」では、これまでに地球に似た岩石惑星とみられる4つの太陽系外惑星「L 98-59 b」「L 98-59 c」「L 98-59 d」「L 98-59 e」が見つかっています。

ここで新たに5番目の惑星「L 98-59 f」の存在を確認したとする、モントリオール大学のCharles Cadieuxさんを筆頭とする研究チームの成果を、同大学が発表しました。論文はThe Astronomical Journalに近日中に掲載される予定です。

太陽系外惑星「L 98-59 f」(下)の想像図(Credit: Benoit Gougeon, Université de Montréal)
【▲ 太陽系外惑星「L 98-59 f」(下)の想像図(Credit: Benoit Gougeon, Université de Montréal)】

存在が指摘されていた惑星を今回確認

L 98-59 fの質量は最小でも地球の約2.8倍。主星であるL 98-59から約0.1天文単位(太陽から地球までの距離の約10%)離れた軌道を、約23日周期で公転しています。

L 98-59は直径と質量が太陽の約30%と小さく、表面温度は約3140℃であるため、これほど近くを公転していても、L 98-59 fの公転軌道はハビタブルゾーンに入っているとみられています。

2021年にL 98-59 eの発見を報告した研究では、視線速度法(後述)のデータをもとに、ハビタブルゾーンを公転する未確認の惑星がL 98-59に存在する可能性がすでに指摘されていました。

今回の研究は、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)などの観測データを改良された手法で分析することで、その惑星が実際に存在することを確認したものになります。また、すでに見つかっている惑星についても、質量と半径の推定値の精度が向上しています。

L 98-59を公転する5つの惑星は、どれも地球に近いサイズと質量を持つと考えられています。小質量星における惑星の形成と進化を理解する上で、L 98-59の惑星系は重要な研究対象として今後も注目されそうです。

太陽系外惑星の観測方法について

太陽系外惑星の観測では「視線速度法(ドップラーシフト法)」および「トランジット法」という2つの手法が主に用いられています。

「視線速度法」とは、太陽系外惑星の公転にともなって円を描くようにわずかに揺さぶられる主星の動きをもとに、惑星を間接的に検出する手法です。L 98-59を公転する5つの惑星のうち、L 98-59 eと今回確認されたL 98-59 fの2つが、この手法で発見されました。

惑星の公転にともなって主星が揺れ動くと、光の色は主星が地球に近付くように動く時は青っぽく、遠ざかるように動く時は赤っぽくといったように、周期的に変化します。こうした主星の色の変化は天体のスペクトル(波長ごとの電磁波の強さ)を得る分光観測を行うことで検出されています。視線速度法の観測データからは系外惑星の公転周期や最小質量を求めることができます。

【▲ 参考動画:系外惑星の公転にともなって主星のスペクトルが変化する様子を示した動画】
(Credit: ESO/L. Calçada)

もう一つの「トランジット法」とは、系外惑星が主星(恒星)の手前を横切る「トランジット(transit)」を起こした際に生じる主星の明るさのわずかな変化をもとに、太陽系外惑星を間接的に検出する手法です。L 98-59を公転する惑星のうち、L 98-59 bとL 98-59 cとL 98-59 dの3つが、この手法で発見されました。

繰り返し起きるトランジットを観測することで、その周期から惑星の公転周期を知ることができます。トランジット時の主星の光度曲線(時間の経過にあわせて変化する天体の光度を示した曲線)をもとに、惑星の直径や大気の有無といった情報を得ることも可能です。

近年では、トランジットの周期に生じるわずかな変動をもとに、重力を介して相互作用する別の惑星を捜索する手法「トランジット時間変動法(TTV法)」も用いられるようになっています。

【▲ 参考動画:系外惑星のトランジットによって恒星の明るさが変化する様子を示した動画】
(Credit: ESO/L. Calçada)

また、太陽系外惑星がトランジットを起こしている時の主星の光には、惑星の大気(存在する場合)を通過してきた光もわずかに含まれています。惑星の大気を通過してから届いた主星のスペクトルは「透過スペクトル」と呼ばれていて、惑星の大気に含まれる物質が特定の波長の電磁波を吸収したことで生じる暗い線「吸収線」が現れます。透過スペクトルを通常のスペクトルと比較すればどのような吸収線が現れているのかがわかるので、惑星の大気組成を調べることができます。

恒星の光を利用して太陽系外惑星の大気組成を調べる手法のイメージ図
【▲ 参考画像:恒星(左)の光を利用して太陽系外惑星(中央下)の大気組成を調べる手法のイメージ図。系外惑星の大気を構成する物質が一部の波長を吸収するため、大気を通過して地球(右)に届いた主星の光のスペクトル(透過スペクトル)を分析することで、惑星の大気組成を調べることができる。また、大気にヘイズ(もや)がある場合は青い光が散乱して、通過した光は少し赤くなる(Credit: ESO/M. Kornmesser)】

 

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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参考文献・出典