きらきら! ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した“さいだん座”の球状星団「NGC 6397」

こちらは「さいだん座(祭壇座)」の方向約7800光年先の球状星団「NGC 6397」のクローズアップです。球状星団は数万~数百万個の恒星が球状に集まっている天体で、宇宙で最も古い天体のひとつとされています。

ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の掃天観測用高性能カメラ(ACS)で観測した球状星団「NGC 6397」のクローズアップ(Credit: NASA, ESA, and H. Richer (University of British Columbia))
【▲ ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の掃天観測用高性能カメラ(ACS)で観測した球状星団「NGC 6397」のクローズアップ(Credit: NASA, ESA, and H. Richer (University of British Columbia))】

白色矮星の理解を深めるためにハッブル宇宙望遠鏡が観測

この画像は「ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope: HST)」の「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」で取得したデータを使って作成されています。2005年3月~4月にかけて実施されたハッブル宇宙望遠鏡によるNGC 6397の観測は、白色矮星の年齢や星団内における動的な分布の歴史を明らかにすることを目的に実施されており、白色矮星に関する新たな知見をもたらしました。

白色矮星は、超新星爆発を起こさない比較的軽い恒星(質量は太陽の8倍以下)が恒星としての生涯を終えた後に進化した姿。地球と同じくらいのサイズに太陽と同じくらいの質量が詰め込まれている高密度な天体です。軽い恒星が晩年を迎えると主系列星から赤色巨星に進化し、外層から周囲へとガスや塵(ダスト)を放出するようになります。ガスを失って燃え尽きた赤色巨星の中心部は、やがて予熱で輝く白色矮星へと進化します。

ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の内部構造を示した図。回折スパイクは副鏡(Secondary Mirror)を支える4本の梁で光が回折することで生じる(Credit: NASA's Goddard Space Flight Center)
【▲ ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の内部構造を示した図。回折スパイクは副鏡(Secondary Mirror)を支える4本の梁で光が回折することで生じる(Credit: NASA's Goddard Space Flight Center)】

また、画像の星々の多くは四方に広がる針状の光を放っています。これは回折スパイク(diffraction spike)と呼ばれるもので、望遠鏡の構造(ハッブル宇宙望遠鏡の場合は副鏡を支える梁)で光が回折することで生じています。

望遠鏡を介しているからこそ現れる光芒なのですが、90度間隔で現れるハッブル宇宙望遠鏡の回折スパイクはとても印象的。きらびやかな球状星団の美しさをさらに引き立てているように思えませんか?

冒頭の画像はNASA=アメリカ航空宇宙局が2007年12月4日付で公開したもので、2025年4月のハッブル宇宙望遠鏡打ち上げ35周年を記念して改めてNASAが紹介しています。


文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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ESAのEuclid(ユークリッド)宇宙望遠鏡が観測した球状星団「NGC 6397」の全体像(Credit: ESA/Euclid/Euclid Consortium/NASA, image processing by J.-C. Cuillandre (CEA Paris-Saclay), G. Anselmi)
【▲ ESAのEuclid(ユークリッド)宇宙望遠鏡が観測した球状星団「NGC 6397」の全体像(Credit: ESA/Euclid/Euclid Consortium/NASA, image processing by J.-C. Cuillandre (CEA Paris-Saclay), G. Anselmi)】

参考文献・出典

  • NASA - How White Dwarfs Get Their 'Kicks'