こちらは「いて座(射手座)」の方向約2万8000光年先の球状星団「NGC 6440」です。球状星団とは数万~数百万個の恒星が球状に集まっている天体のことで、たとえば天の川銀河ではこれまでに約150個の球状星団が見つかっています。画像左上を中心にびっしりと密集した星々が輝いているNGC 6440は、まるで宝石箱のような美しさを感じさせます。

【▲ ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラ(NIRCam)で観測された球状星団「NGC 6440」(Credit: ESA/Webb, NASA & CSA, P. Freire; Acknowledgement: M. Cadelano and C. Pallanca)】
【▲ ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラ(NIRCam)で観測された球状星団「NGC 6440」(Credit: ESA/Webb, NASA & CSA, P. Freire; Acknowledgement: M. Cadelano and C. Pallanca)】

この画像は「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope: JWST)」の「近赤外線カメラ(NIRCam)」で取得したデータをもとに作成されました。ウェッブ宇宙望遠鏡は人の目で捉えることができない赤外線の波長で主に観測を行うため、公開されている画像の色は取得時に使用されたフィルターに応じて着色されています。

ウェッブ宇宙望遠鏡によるNGC 6440の観測は連星パルサー「PSR J1748-2021B」のより詳しい性質を調査する研究の一環として実施されました。連星パルサーは伴星をともなうパルサー(※)のことで、パルサー連星とも呼ばれます。PSR J1748-2021Bのパルサーは質量が太陽約2.5個分と推定されていますが、この値は理論上予想されている中性子星の質量の上限とほぼ同じです。伴星の質量がわかれば主星であるパルサーの質量を確認できることから、伴星の検出を主な目的とした観測が行われました。

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※…点滅するように周期的な電磁波が観測される中性子星の一種。高速で自転する中性子星からビーム状に放射されている電磁波の放出方向が自転とともに周期的に変化することで、地球では電磁波がパルス状に観測されると考えられている。

【▲ ハッブル宇宙望遠鏡(HST)とジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)で観測した球状星団NGC 6440の比較(動画)】
画像は前半がハッブル宇宙望遠鏡、後半がウェッブ宇宙望遠鏡で観測したNGC 6440
(Credit: NASA & ESA, N. Bartmann (ESA/Webb); Music: Stellardrone – The Night Sky in Motion)

また、欧州宇宙機関(ESA)によると、ウェッブ宇宙望遠鏡の観測によって新たに得られたNGC 6440のデータから、球状星団内の星々に含まれるヘリウムと酸素の存在量に違いがみられることが初めて明らかになりました。NGC 6440があるいて座や隣接する「さそり座(蠍座)」の方向には塵(ダスト)を多く含むガスが分布しています。そのため、星から放射された光が塵に吸収・散乱されたり、星が実際よりも赤っぽく見えてしまったりして観測が難しい領域となっています。ウェッブ宇宙望遠鏡は塵に比較的妨げられにくい赤外線での観測に特化していることから、NGC 6440と同様に天の川銀河の中心方向にある星団を対象とした詳細な調査に期待が寄せられています。

ウェッブ宇宙望遠鏡で観測したNGC 6440は、ESAから“ウェッブ宇宙望遠鏡の今月の画像”として2024年5月1日付で公開されています。

 

Source

  • ESA/Webb – Star-studded cluster (NGC 6440 NIRCam wide-field image)

文・編集/sorae編集部

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