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天の川銀河の中心部は、恒星が棒状にまとまった構造をしています。このような構造を持つ銀河は「棒渦巻銀河」と呼ばれます。棒渦巻銀河の形成には、シミュレーションによると数十億年かかると考えられています。

しかしCAB(スペイン宇宙生物学センター)のLuca Costantin氏などの研究チームは、誕生から約21億年しか経っていない宇宙に、棒渦巻銀河「ceers-2112」を「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」の観測データから発見しました。分析により、ceers-2112は10億年以内に棒渦巻銀河になった可能性があることから、これは棒渦巻銀河に留まらず、様々な銀河の構造形成過程の理論を書き換える可能性のある発見です。

【▲図1: 天の川銀河との類似性を連想させるceers-2112の芸術的表現。 (Image Credit: Luca Costantin (CAB & CSIC-INTA) ) 】
【▲図1: 天の川銀河との類似性を連想させるceers-2112の芸術的表現(Credit: Luca Costantin (CAB & CSIC-INTA) )】

■天の川銀河などの「棒渦巻銀河」はどのように作られたか?

私たちの地球が属する天の川銀河は、全体は渦巻型の円盤構造をしている一方、周りより恒星密度の高い中心部は棒状の構造をしていると考えられています。このような銀河は「棒渦巻銀河」と呼ばれます。全銀河に占める棒渦巻銀河の割合は、近い宇宙では約65%と多数派である一方で、遠い宇宙では約20%まで低下します。宇宙は遠くを観測するほど古い時代を観測するのに等しいため、棒渦巻銀河は時間をかけて複雑な構造が形成されたことを示唆しています。

棒渦巻銀河がどのように形成されるのかについては、長年のシミュレーション研究で少しずつ明らかにされています。過去のシミュレーション研究によれば、中心部の棒状構造はどんなに早くても40億年かかると推定されていました。棒状構造は恒星を生み出す星形成を促進すると考えられているため、棒状構造がどのくらいのスピードで構築されたのかは重要な情報です。

■最も遠い棒渦巻銀河「ceers-2112」を発見

Costantin氏らの研究チームは、ウェッブ宇宙望遠鏡の深宇宙探査プログラムの1つ「CEERS(Cosmic Evolution Early Release Science)」のデータから、「ceers-2112」とカタログ名がつけられた銀河の分析を行いました。当初ceers-2112は目立った特徴を示すデータが無かったことから、特に注目されていませんでした。

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しかしCostantin氏らが、7つの別々の観測データを元に多角的に分析したところ、ceers-2112の中心部には棒状構造がある可能性が高いことを突き止めました。驚くべきはその時代です。ウェッブ宇宙望遠鏡と「ハッブル宇宙望遠鏡」のそれぞれの観測データに基づくと、ceers-2112の赤方偏移の値はz=3.03であり、これは地球から約213億光年離れた位置にあり、今から約117億年前の宇宙に存在していた棒渦巻銀河であることになります。この時代は、宇宙誕生から約21億年しか経っていません。この研究により、ceers-2112は発見された最も遠い棒渦巻銀河となりました (※)

※…この記事における天体の距離は、光が進んだ宇宙空間が、宇宙の膨張によって引き延ばされたことを考慮した「共動距離」での値です。これに対し、光が進んだ時間を単純に掛け算したものは「光行距離(または光路距離)」と呼ばれます。また、2つの距離の表し方が存在することによる混乱や、距離計算に必要な数値にも様々な解釈が存在するため、論文内で遠方の天体の距離や存在した時代を表すには一般的に「赤方偏移(記号z)」が使用されます。

関連記事: 80億年以上前の銀河で棒状構造が見つかった! ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測データを分析(2023年1月9日)

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【▲図2: ceers-2112の観測データを様々な方法で分析し画像化したもの。図bの黒線で囲まれた赤い部分が中心部の棒状構造の直接観測した構造であると思われたため、これを確かめるための計算や分析を行った結果、図cの赤い楕円で囲まれた棒状構造が現れました。 (Image Credit: Luca Costantin, et al.) 】
【▲図2: ceers-2112の観測データを様々な方法で分析し画像化したもの。図bの黒線で囲まれた赤い部分が中心部の棒状構造の直接観測した構造であると思われたため、これを確かめるための計算や分析を行った結果、図cの赤い楕円で囲まれた棒状構造が現れました(Credit: Luca Costantin, et al.)】

さらなる観測データの分析により、ceers-2112は宇宙誕生から約12億年後に円盤の形成が始まり、そこから4億年後には中心部の棒状構造が完成したことが示唆されました。これは、棒渦巻銀河が10億年以内のスピードで形成されるという、従来のシミュレーションより数倍も早い形成過程があることになります。

■様々な銀河の形成過程に影響を与える発見かもしれない

ceers-2112が存在した時代までに棒渦巻銀河を形成するプロセスは不明のままです。棒渦巻銀河に限らず、様々な銀河の構造の形成や維持には重力が重要であることが分かっており、そして重力源としてはその正体が不明な「暗黒物質(ダークマター)」が大量に存在することも分かっています。今回の研究結果は、初期の宇宙における暗黒物質の量や分布を制限し、棒渦巻銀河に限らず様々な銀河の構造形成過程に影響を与える可能性もあります。

いずれにしても、棒渦巻銀河の棒状構造は、時代をさかのぼるごとにサイズが小さくなり、また見た目の大きさも小さくなります。これまでと比べて異例の感度を持つ宇宙望遠鏡であるウェッブ宇宙望遠鏡の性能が無ければ、このような発見はなかったでしょう。今回の研究結果はceers-2112に留まらず、他の棒渦巻銀河も観測データに隠れている可能性も示しています。

 

Source

  • Luca Costantin, et al. “A Milky Way-like barred spiral galaxy at a redshift of 3”. (Nature)
  • Iqbal Pittalwala. “Milky Way-like galaxy found in the early universe”. (University of California, Riverside)

文/彩恵りり

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