7月、梅雨が明けきらず雨の日も多い時季ですが、晴れた日に夜空を見上げれば夏の星座たちに出会うことができます。
南の空の低い位置には「さそり座」があります。1等星「アンタレス」を中心としたS字カーブが目立つ、見つけやすい星座です。釣り針のような形をしていることから、瀬戸内地方では「うおつり星」とも呼ばれていました。
南東の空の高い位置には「夏の大三角」があります。こと座の「ベガ」、わし座の「アルタイル」、はくちょう座の「デネブ」という3つの1等星からなる三角形です。3つの星のうち、ベガは七夕の「織姫星」(織女星)、アルタイルは「彦星」(牽牛星)に当たります。
織姫星と彦星の間には伝説の通り「天の川」がありますが、天の川は光が淡く、空が明るい場所で見つけるのは難しいでしょう。さそり座の尾のあたりは天の川が最も濃い部分なので、そこで天の川の光をとらえて、夏の大三角の方へと辿っていくと、空を貫くような天の川の全体像が見えてくるかもしれません。
さそり座周辺の天の川が濃いのは、その方向に私たちの住む天の川銀河(銀河系)の中心があるからです。天の川銀河は端の方ほど星が少なく、中心に近いほど星が多く分布しています。そのため、さそり座の方向は特に星が集中していて、それだけ天の川が濃く見えるのです。
2023年7月に見られる惑星には、金星、土星、木星があります。金星は夕方、木星と土星は深夜過ぎに見ることができます。
2023年7月の天文情報
●金星が最大光度
2023年7月7日、七夕の日に金星が最大光度を迎えます。明るさはマイナス4.7等(※1)となり、良く晴れて空が澄んでいる時には昼間でも見ることができます。国立天文台のサイトや星座アプリなどを使って、金星の位置を正確に把握しておくと見つけやすいでしょう。
望遠鏡を持っている人は、金星の観察にチャレンジしてみましょう(決して太陽の方には望遠鏡を向けないように注意して下さい!)。金星は地球よりも内側を公転している内惑星なので、地球との位置関係によって月のように満ち欠けをしますし、地球からの距離も大きく変化します。最大光度の頃の金星は、三日月のように大きく欠けた形に見えるはずです。
距離だけでいえば地球に最も近い時(内合)が明るく見えるはずですが、この時点での金星は地球から見ると新月のようになってしまい、見ることはできません。そのため、金星が最も明るいのは内合の前後となります。
次の金星の内合は8月13日です。内合に近づくにつれて金星の見かけの位置は太陽に近づき、見えづらくなっていきます。
●月が木星・金星に接近
2023年7月には、月と木星・金星の接近を見ることができます。7月12日深夜、下弦を過ぎた細い月が昇る頃、木星も姿を現します。木星の等級はマイナス2.2等(※1)と明るく、周辺にそれほど明るい星もないため、すぐに見つけられるはずです。
月と木星は連れ立って南の空へ上り、日の出前には1.5度の離角(※2)で並びます。満月の角直径(※3)が約0.5度ですから、1.5度は満月3個分程度に相当します。ただし、これは月の中心から木星までの距離であるため、月の縁から木星までは満月2.5個分だけ離れているということになります。やや離れてはいますが、木星は月の下にぶら下がるような位置にあるため、「!」マークのようなユーモラスな様子が見られるでしょう。
2023年7月20日の夕方には、西の空で三日月が金星に接近します。7日に最大光度を迎えたばかりの金星は、マイナス4.7等(※1)という目を射るような明るさです。月と金星は同日17時37分に最接近しますが、それでも離角は8度(満月16個分)程度(※4)です。接近と聞いて思い浮かべるイメージと比べて、やや離れ過ぎているかもしれません。
とはいえ、これからの金星は内合へ向かい、見えづらくなってしまいます。そう考えると、この月との接近が、金星の今期最後の晴れ舞台であるともいえるでしょう。西の方角が開けた空を広く見渡せる場所で、三日月と金星の共演をお楽しみください。
※1…国立天文台 曆計算室 今日のほしぞらより
※2…離角:天球上で観測点から見た2つの天体間の距離を角度で表したもの。
※3…角直径:天体の見かけの大きさを角度で表したもの。視直径と同義。
※4…金星と月の接近の時刻および離角は天文年鑑2023記載のデータを引用
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- Image Credit: 国立天文台, sorae編集部
- 国立天文台 - 東京の星空・カレンダー・惑星(2023年7月)
- 国立天文台 - 東京の星空・カレンダー・惑星(2023年8月)
- 国立天文台 - 暦計算室
- 天文年鑑2023 天文年鑑編集委員会編著 誠文堂新光社
文/sorae編集部