中心部に紫色のもやを抱えた「パープルヘイズ銀河」M66(NGC 3627)
【▲VLT搭載の「MUSE」を用いて捉えられたNGC 3627(M66)(Credit: ESO / PHANGS)】

ヨーロッパ南天天文台(ESO)は2022年5月2日付けで、「Purple Haze(パープルヘイズ:紫色のもや)」と題した魅惑的な銀河の画像を「今週の一枚」として紹介しました。この画像に映る銀河は、しし座の方向に約3100万光年離れた位置にある「NGC 3627」、一般的には「M66」として知られています。M66は、M65(NGC 3623)とNGC 3628とともに「しし座の三つ子銀河」として天文学ファンに親しまれています。

VLT搭載の「MUSE」を用いて捉えられた「パープルヘイズ銀河」ことM66(NGC 3627)(Credit: ESO / PHANGS)
【▲ VLT搭載の「MUSE」を用いて捉えられたNGC 3627(M66)(Credit: ESO / PHANGS)】

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VLTのMUSEで捉えたM66の新たな視点

この画像は、南米チリにあるESO超大型望遠鏡(VLT)に搭載された広視野面分光観測装置MUSEを用いて取得されました。MUSEは、銀河の詳細な分光データを高解像度で取得できる先進的な観測装置であり、宇宙の構造や進化を理解する上で重要な役割を果たしています。

銀河としては珍しい色合いになっているのは、異なる波長の光を組み合わせて観測したことによるもので、特徴を分かりやすく色付けした疑似カラーの画像となっています。

新たに生まれた星々が照らすガス雲

ESOの研究者によれると、この画像で観察されているのは銀河内の星そのものではなく、生まれたばかりの若い星々によってイオン化されたガスです。これらの若い星は高温で強烈な紫外線を放出し、周囲のガスをイオン化させます。その結果、ガス雲が輝き、星形成活動の活発な領域が浮かび上がります。水素、酸素、硫黄がそれぞれ赤、青、オレンジで表示されているということです。

PHANGSプロジェクトによる深宇宙の解明

この画像は、「PHANGS(Physics at High Angular Resolution in Nearby GalaxieS:近傍銀河の高角度分解能物理学)」プロジェクトの一環として取得されました。PHANGSプロジェクトは、近傍銀河を高解像度で観測し、さまざまな環境下での星形成のメカニズムを解明することを目的としています。ESOは、「新しい星がどのように生まれるのか、その引き金となる要因や促進・阻害する要素をより深く理解することが、このプロジェクトの目標です」と述べています。

宇宙の神秘を解き明かす一助に

今回公開されたM66の画像は、宇宙の星形成活動や銀河の構造に関する新たな知見をもたらす貴重な資料となります。紫色のもやに包まれたこの銀河は、宇宙が持つ多様な表情と神秘を私たちに伝えてくれます。今後もVLTやMUSEをはじめとする最先端の観測装置によって、さらなる発見が期待されます。

 

 

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Source

  • Image Credit: ESO / PHANGS
  • ESO - Purple haze

文/吉田哲郎 編集/sorae編集部