X線連星「M51-ULS-1」を公転する系外惑星の想像図

【▲ X線連星「M51-ULS-1」を公転する系外惑星の想像図。ブラックホールもしくは中性子星(中央)には大質量星(右)から落下したガスによって降着円盤が形成されており、その手前を系外惑星が横切る様子が描かれている。画像では連星のすぐ近くを系外惑星が公転しているように見えるが、実在すれば太陽から土星までの距離の2倍程度(約20天文単位)離れているとされる(Credit: NASA/CXC/M. Weiss)】

ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのRosanne Di Stefanoさんを筆頭とする研究グループは、渦巻銀河「M51」にある連星「M51-ULS-1」の周囲に太陽系外惑星が存在する可能性を示した研究成果を発表しました。M51(NGC 5194)は「りょうけん座」の方向およそ3000万光年先にあり、近くにある銀河「NGC 5195」とあわせて「子持ち銀河」とも呼ばれています。

人類はこれまでに4500個以上の系外惑星を発見していますが、その大半は地球からおよそ3000光年以内の天の川銀河内部に位置しています。欧州宇宙機関(ESA)によれば、天の川銀河とは別の銀河で惑星系が存在すると確認された例はまだないとされており、今回の発見は別の銀河における系外惑星探査手法の確立につながるかもしれません。

■約3時間に渡り途切れたX線放射は系外惑星が遮った可能性

渦巻銀河「M51」におけるX線連星「M51-ULS-1」の概略位置(四角)を示した図(Credit: X-ray: NASA/CXC/SAO/R. DiStefano, et al.; Optical: NASA/ESA/STScI/Grendler)

【▲ 渦巻銀河「M51」におけるX線連星「M51-ULS-1」の概略位置(四角)を示した図(Credit: X-ray: NASA/CXC/SAO/R. DiStefano, et al.; Optical: NASA/ESA/STScI/Grendler)】

今回Di Stefanoさんたちが系外惑星存在の可能性を指摘するM51-ULS-1は、互いに接近したブラックホールまたは中性子星大質量星(推定される質量は太陽の約20倍)から成る「X線連星」と呼ばれるタイプの連星です。

X線連星では大質量星のガスの一部がブラックホールや中性子星に剥ぎ取られて落下しながら降着円盤を形成していると考えられています。降着円盤の温度は摂氏数百万度と高く、ここから放出されたX線が観測されることからX線連星と呼ばれます。天の川銀河の外にある系外惑星を見つけようとしているDi Stefanoさんたちは、このX線連星に注目しました。

系外惑星を探す手法は幾つかありますが、惑星が恒星の手前を横切る「トランジット」が起きた時のわずかな明るさの変化を捉える「トランジット法」や、惑星の公転にともなう恒星のふらつきを光の色のわずかな変化として捉える「視線速度法(ドップラー法)」が主に利用されています(トランジット法や視線速度法について、詳しくは以下の関連記事をご覧下さい)。

関連:35光年先の系外惑星を詳細に観測、ハビタブルゾーン内に新たな惑星が存在か

ただ、別の銀河にある星々の明るさや色の変化を個別に検出するのは大変難しく、天の川銀河と同じ方法はうまく機能しません。そこでDi Stefanoさんたちは、非常に狭い領域から強いX線が放射されるX線連星に注目したのです。

ESAの「XMM-Newton」によってX線の波長で観測されたM51の疑似カラー画像(Credit: ESA)

【▲ ESAの「XMM-Newton」によってX線の波長で観測されたM51の疑似カラー画像(Credit: ESA)】

X線で強く輝く天体は比較的少ないので、可視光線や赤外線よりも個々の天体を識別しやすくなります。そのうえ、X線連星を成すブラックホールや中性子星はコンパクトな天体であるため、トランジットを起こした惑星によって降着円盤が遮られることでX線の強さが変化することが考えられるといいます。つまり、前述のトランジット法を可視光線ではなくX線の波長で行ってみようというわけです。

研究グループはアメリカ航空宇宙局(NASA)の「チャンドラ」やESAの「XMM-Newton」といったX線観測衛星を使い、M51で55個、おおぐま座の「M101(回転花火銀河)」で64個、おとめ座の「M104(ソンブレロ銀河)」で119個のX線連星を観測しました。その結果、たった一例だけ、M51-ULS-1のX線放射が約3時間に渡りゼロになった様子が捉えられたといいます。

Di StefanoさんたちはX線放射が一時的にゼロになった原因を慎重に分析しました。放射を遮ったとみられる天体のサイズは、小さな恒星である赤色矮星や、恒星と惑星の中間にあたる褐色矮星よりもさらに小さいことがわかりました。時間ごとのX線強度の変化は天体が明確な表面を持つことを示しているため、ガスや塵の雲が横切った可能性も低いといいます。また、XMM-NewtonはM51-ULS-1を成す大質量星自身がX線放射を遮る様子を部分的に捉えていたものの、放射が遮断された時間はずっと長かったとされています。

今回報告された系外惑星候補の公転軌道を示した図

【▲ 今回報告された系外惑星候補の公転軌道を示した図。系外惑星はX線連星を約70年周期で公転していると推定されている。地球は図の下方にあって、公転軌道を真横から見る位置関係にある(Credit: NASA/CXC/M. Weiss, 日本語表記は筆者が追加)】

研究グループはこうした分析結果をもとに、M51-ULS-1のX線放射を約3時間遮ったのは土星ほどのサイズがある系外惑星の可能性があり、X線連星の周囲をおよそ70年周期で公転していると推定しています。もしも実際に存在するのであれば、その惑星はX線連星を成すブラックホールもしくは中性子星を生み出した超新星爆発を生き抜いたことになりますし、いずれは大質量星の超新星爆発にもさらされるかもしれません。

Di Stefanoさんは「X線強度の落ち込みが惑星によるトランジットの特徴を有しているかどうかをコンピューターシミュレーションを用いて分析し、見事に一致することを発見しました。私たちはかなりの自信を持って、これは惑星に他ならず、天の川銀河の外で最初の系外惑星候補を発見したと考えています」とコメントしています。

問題は、この系外惑星候補の存在を確認するための追加観測が難しいところです。約70年と推定される公転周期が正しければ、次にX線が遮られる様子が観測できるのは70年後になるからです。研究グループは新たな系外惑星候補を求めて過去に取得されたチャンドラとXMM-Newtonによる観測データの分析に引き続き取り組む予定で、Di Stefanoさんはいつの日か別の銀河に存在する系外惑星が確認される日が来るかもしれないと期待を寄せています。

 

関連:2012年に見つかった太陽系外惑星、恒星ではなく白色矮星を公転している?

■この記事は、Apple Podcast科学カテゴリー1位達成の「佐々木亮の宇宙ばなし」で音声解説を視聴することができます。

Image Credit: NASA/CXC/M. Weiss
Source: ESA / チャンドラX線センター
文/松村武宏

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