地球のように生命を育む惑星が誕生するには「急成長した微惑星」が必要か
小惑星どうしの衝突を描いた想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)
【▲ 小惑星どうしの衝突を描いた想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

地球や木星をはじめとした惑星は、若い星を取り囲む「原始惑星系円盤」と呼ばれるガスや塵の集まりのなかで誕生すると考えられています。円盤のなかでは小さな塵が合体して数多くの微惑星が形成され、微惑星どうしが衝突を繰り返すことで原始惑星へ成長するとみられています。

ライス大学のDamanveer Grewal氏らの研究グループは、生命を育む地球のような惑星が形成されるためには、恒星からの距離だけでなく惑星形成時の成長速度も重要だとする研究成果を発表しました。研究グループによると、形成された惑星が十分な大気を持つためには、惑星胚(planetary embryo)と呼ばれる月~火星サイズの比較的大きな微惑星の成長速度が鍵になるようです。

■急速に成長した惑星胚が生命に必須の揮発性物質をもたらす可能性

地球の内部は岩石でできた地殻マントル金属でできたコア(核)に分かれた構造をしていますが、最初からこのように分かれていたわけではなく、ある程度の大きさに成長して内部が溶けた微惑星の段階から、軽い岩石の成分が上へ、重い金属の成分が下へと分かれていったと考えられています。岩石成分と金属成分が分かれていくこのプロセスは「分化」と呼ばれています。

研究グループによると、分化が進むと微惑星や原始惑星の内部から窒素が放出されて大気に加わるものの、他の微惑星と衝突することなどによって、この窒素は宇宙空間へと失われていきます。ただし、大気やマントルの窒素が枯渇した後もコアに十分な量の窒素が含まれていれば、形成が進む地球のような惑星にとって窒素の重要な供給源になり得るといいます。

最終的に地球のような生命が居住可能な惑星が形成される条件を調べるために、研究グループは高圧高温条件下での実験を実施。窒素が大気・マントル・コアの間でどのように分配されるのかを分析した結果、原始惑星に含まれる窒素の量は惑星胚の成長速度に左右される可能性が示されました。研究グループによると、惑星胚が太陽系の始まりからおよそ100万~200万年以内という短期間で急速に成長した場合、惑星胚内部の分化があまり進まないため、惑星胚から形成される原始惑星は窒素を保持することになるといいます。

いっぽう、惑星胚の成長速度が遅いと内部の分化が進むため、時間をかけて成長した惑星胚から形成される惑星の場合、窒素だけでなく炭素や水といった生命にとって欠かせない揮発性物質十分には蓄積されなかっただろうと研究グループは指摘しています。地球と同じように恒星のハビタブルゾーン(地球型惑星の表面に液体の水が存在し得る領域)を公転する惑星であっても、後に生命が誕生するかどうかは、原始惑星が形成されつつある段階ですでに決まっているのかもしれません。

 

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Image Credit: NASA/JPL-Caltech
Source: ライス大学
文/松村武宏